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研究と報告
終末期癌患者にみられる否認
著者: 森田達也1 井上聡1 千原明1
所属機関: 1聖隷三方原病院ホスピス
ページ範囲:P.173 - P.180
文献購入ページに移動 【抄録】我々は,否認を示した終末期癌患者の27例について,精神科診断,否認の水準,認知・行動様式,強化因子,医療者に生じた葛藤,転帰を調査し,3症例を報告した。7名は(軽)躁病エピソードと診断された。否認の水準は2名で病名レベルであったが,25名では病状レベルであった。認知様式としては,1)将来は悪くなるかもしれないが,今は悪くない,2)今は悪いが,将来よくなる,3)今も悪くないし,将来はもっとよくなるというものがあった。行動様式としては,医療行為の拒否,民間療法や新興宗教への熱心な参加,非現実的な治療の要求,過剰な医師の理想化が認められた。強化因子として,家族の不安,患者の性格,社会支援の乏しさが同定でき,医療者の問題として,治療に関する葛藤,家族の問題,看護婦への過剰な要求が挙げられた。転帰は,受容・成熟した防衛52%,不安や抑うつ26%,否認の継続22%であった。
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