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母子精神保健からみた母親学級における産前教育に関する研究

著者: 岡野禎治1 増地聡子1 玉木領司1 野村純一1 村田真理子2

所属機関: 1三重大学医学部精神神経科 2三重大学医学部衛生学

ページ範囲:P.213 - P.218

■はじめに
 産褥期の精神障害の中でも産後うつ病はその出現頻度が高いこと6,13)から,地域での医療サービス体制12)や産科との連携1,2,15)は母子精神保健の重要な課題の1つである。しかしながら,長期研究では産後うつ病の約25%が出産後1年を経過しても,なおうつ状態である5,11)といわれ,夫婦関係3)や母子関係13)に与える影響が指摘されている。こうしたことから,最近英国の王立精神科医協会によるうつ病キャンペーンの中でも,産後うつ病の啓蒙が取り上げられ,予防についての関心も次第に高まっている9,10)
 一方,日本においては出産は「晴れの場」とみなされ,褥婦自身がうつ病に罹患しても,自覚できにくかったり,周囲に打ち明けにくいといった状況がある。その上,家族も本人の怠けや努力不足と考えがちであるため,早期受診が遅れる場合がある17)。また現在の日本の母子保健体制においては,産後1か月検診以降産後数か月後の乳幼児健診までの期間は医療機関との接触がない空白期間に相当し,母親が産後うつ病に罹患しても途方に暮れることが少なくない。
 したがって,産後うつ病の啓蒙は母子精神保健の観点からも極めて重要な課題であり,今日英国を中心に対策が講じられている9,12,15)。その中でも,Cox6)は妊産婦とその家族に対する産前教育が産後うつ病の予防に対して重要な役割を果たすと指摘している。
 我々は産科病棟に対するコンサルテーション・リエゾン・サービス18)の一環として,1988年から産科主催の母親学級において産後うつ病に関する産前教育を実践している。そこで,今回は産前教育の受講例のうち,産後に精神科を受診した産褥婦を対象として臨床統計的研究を行い,妊婦に対する産後うつ病の産前教育の効果と意義について検討したので報告する。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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