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文献詳細

雑誌文献

精神医学39巻4号

1997年04月発行

文献概要

展望

精神分裂病ハイリスク児

著者: 岡崎祐士1

所属機関: 1長崎大学医学部精神神経科学教室

ページ範囲:P.346 - P.362

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■はじめに
 今日,精神分裂病(以下分裂病)の成人早期の臨床的成立(発症)に至る源流は人生早期に発するという見解が受け入れられつつある。この分裂病の人生早期起源説の背景には過去20年間のいくつかの知見がある。①分裂病成因説の大枠としての脆弱性ストレスモデルの普及,②分裂病の脳構造異常の進行性の証拠が明らかでなく発症前からの存在を示唆する知見の集積,③分裂病罹病危険性を高める胎生期・周産期・小児期の危険因子の報告,④発達早期の脳侵襲の影響が罹病危険期になって発現するという神経発達論的成因仮説の提唱,⑤遺伝子変異が分裂病罹病危険因子の1つである可能性の示唆,などである。しかしなお,分裂病の源流はいかなる性質のものか,1つか複数か,人生早期のどの時期かなど詳細は不詳である。
 分裂病の人生早期起源説の延長線上に,分裂病ハイリスク児にも一定の関心が注がれるようになった。分裂病への罹病危険性が一般人口中よりも高いと想定されるハイリスク児を人生早期から罹病まで縦断的に視野に収めた研究によって,分裂病の臨床的成立に至る過程の解明が期待されるからである。分裂病ハイリスク児研究は,分裂病の病態の構造を解明するだけでなく,一次発症予防の可能性をも探ろうとする展望を持っている。
 本稿では,分裂病ハイリスク児研究の知見を主とし,前分裂病者の病前特徴研究の知見を加えて,分裂病罹病に関連する小児期の特徴を記述することにする。小児期は狭く限定せず,必要に応じて出生前や思春期の知見にも言及したい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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