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文献詳細

雑誌文献

精神医学39巻5号

1997年05月発行

文献概要

特集 学校精神保健—教育との連携の実際

学校精神保健活動の実際—精神科医はどう学校に関与するか

著者: 北村陽英1

所属機関: 1奈良教育大学教育学部・学校保健研究室

ページ範囲:P.456 - P.463

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■はじめに
 児童青年精神科を受診する児童青年はそのほとんどが学校児童生徒である。当然のことながら治療は学校教育を視野に入れ,直接的にしろ間接的にしろ学校と連絡をとりながら行わざるをえない。児童青年は現代社会の中で成長と発達の途上にあり,家庭生活と学校生活の影響下で何らかの問題を抱えて治療あるいは相談を受けに来ている。病み悩む児童生徒について,病・悩みの原因をさぐるとき,例えば不登校のような場合は学校との関係において,いじめで自殺を考える児童生徒の場合は同級生との関係において,家庭内暴力の場合は家族関係において問題を生じているか,あるいは自閉性疾患や精神分裂病の場合には児童青年個人にその主たる原因がある疾患で相談治療に来ているといったように,我々は学校,同級生,家族,児童青年自身のどれかに原因を求めがちである。しかしこれらの問題事象の大部分は原因の所在を学校,同級生,家族,本人自身のどれか1つだけに求めようとすると大きな間違いを起こす。ましてやその治療の在り方は,学校,家族,本人,往々にして同級生など,本人を取り巻く人々と本人が置かれている環境を配慮して行われねば,治療効果は上がらない。
 治療・相談に応じるにあたって,児童青年が,小学校中学年までの児童期,小学校高学年から中学生の思春期(青年期前期),高校生相当年齢の青年期中期,20歳前から20歳代の青年期後期のどの成長発達段階にあるかをよく認識した上で,対応されねばならない。現代においても,児童期青年期の成長発達において,第二自己主張期(第二反抗期)の出現の意味は極めて大きく,性の発達と成熟,社会性の発達・他者の中での自己の確立,自我理想の形成と自己実現は,いずれ迎える成人社会生活をその人なりに送るために必要な,児童期青年期に取り組んで一定の発達を遂げておかねばならない発達課題である4)
 また,児童生徒の日常生活感覚は時代とともに大きく変化しており,治療・相談に応じるとき,現代の生活感覚をあらかじめよく理解しておく必要がある。治療者の姿勢としては,「決めつけ」「突き放し」をしないこと,成長の途上にある児童生徒であること,多くが回復し,軌道修正が可能であることを念頭に置いて,希望を捨てないことが肝要である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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