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研究と報告
文献概要
【抄録】万能的,自己愛的な核を持つ境界例4例を取り上げ,その核の位置づけを,患者と社会的枠組との関係から論じた。患者には,枠や制限の設定を伴う役割構造が受け入れられていないことを示し,それと,ライバル関係の止揚がなされないことが関係していることを論じた。患者の万能的な核は,役割構造の制限を受けない親切心,ライバル関係を完全に超えて他人に認められるような能力,美質の主張であると考えられた。さらに一見役割構造の介在が存在しないように見える,愛,友情をめぐる二者関係においても,患者は,自分と他者を出口のない関係へと導き,安定した関係を築くことが困難なことを論じた。考察と関係する治療の留意点についても付言した。
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