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研究と報告
フランス司法精神医学と新刑法典—フランスにおける精神鑑定の理論と実際
著者: 影山任佐1
所属機関: 1東京工業大学保健管理センター・工学部
ページ範囲:P.601 - P.608
文献購入ページに移動 【抄録】フランスでは1994年3月1日より,新刑法典が施行された。この新刑法典は旧草案において濃厚であった「新社会防衛論」を退け,自由刑代替システムを大幅に取り入れ,刑の個別化,人道化を指針としたもので,ドイツなどとは異なり,本格的な治療処分は導入しなかった。新刑法典では「刑事責任能力」の用語が採用され,「限定責任能力」も同122.1条第2項に明確に規定され,旧刑法の責任能力の「生物学的規定」から「弁別能力」,「統御能力」をも考慮する「混合法的規定」へと変化した。このため,いわゆる自由意志の「可知論的」立場が支配的傾向を強めることが予想される。鑑定においては犯罪学的診断(危険状態,予後,処遇や治療方法)が重視され,フランスは世界で最も厳密な精神鑑定能力を必要とされる国の1つとなった。欧州各国で刑法改正が進行中であり,フランスの普遍性の中に独自性を示す改革は注目される。本論ではフランス刑法典と司法精神医学,精神鑑定理論を論じ,新刑法典下でのこれらの特徴と問題点を分析した。
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