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文献詳細

雑誌文献

精神医学39巻6号

1997年06月発行

文献概要

研究と報告

老人盗害妄想症患者の社会心理学的背景—地域精神保健活動を通じて

著者: 堀口淳1 山下英尚2 藤川徳美2 柳井一郎2 横田則夫1 山脇成人1

所属機関: 1広島大学医学部神経精神医学教室 2国立療養所賀茂病院精神科

ページ範囲:P.625 - P.631

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 【抄録】盗害妄想症5例(妄想症群)と盗害妄想がみられた痴呆患者6例(痴呆群)の,社会心理学的背景を検討した。病前性格は,妄想症群では「世話好き」「働き者」であったが,痴呆群では一定の傾向はなかった。妄想の発症時期は,妄想症群では全例発症前からの,慢性の身体疾患の悪化による生活行動範囲の制限と対人交流の狭小化のみられた時期に一致し,痴呆群では全例痴呆発症後であった。妄想対象は妄想症群は全例とも特定の近親者であったが,痴呆群では不特定であった。以上から,老人の盗害妄想症の発症機制として,「世話をする自分」から「世話をされる自分」へ推移する状況で,本来頼りにすべき近親者が妄想対象となる過程が指摘された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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