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文献詳細

雑誌文献

精神医学39巻8号

1997年08月発行

文献概要

シンポジウム スーパービジョンとコンサルテーション—地域精神医療の方法

地域精神医療における精神保健コンサルテーション

著者: 皆川邦直1

所属機関: 1東京都精神医学総合研究所

ページ範囲:P.855 - P.862

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■はじめに
 我が国における地域精神医療は黎明期を終えて本格的な発展期を迎えているが,社会的偏見に基づく収容施設(work house,mad house,asylum)2,7,13)への隔離政策から,地域に開かれた精神医療への変換(病院精神医療と地域精神医療の統合9,10,14))は,第二次世界大戦後まず英国において始まり,次いで米国が続く形で先進諸国に普及してきた。この一大変革は,2回の世界大戦に対する反省から生まれたものであるが,戦後,周知のとおり先進諸国においては人権と平等原理,議会制民主主義などが尊重されるようになった。一方,個人の精神生活のレベルでは,Heideggarの自己実現という価値観(自我理想)が重視されるようになった。このような個人と社会の変化は,行政や司法に情報公開を求めるような動向を生み出し,また医療に対しても影響を与えずにはおかなかった。その1つはインフォームド・コンセント概念の誕生6)である。これはナチの人体実験に対する批判と反省が,人体実験は被験者からインフォームド・コンセントを得て行わねばならないことなどを記したニュールンベルグ要綱として示されたことに端を発して,やがて一般の医療行為に対しても,医師(権威)は患者(消費者)に情報を公開して,そのサービスを受ける患者の同意を得なければならないという認識に連なった6)。このようにパターナリズム12)を減じようとする社会的な動向は,医師・患者関係にも変化を促してきた。そして今や我が国においても,医師・患者関係に対等原理を導入して,患者に権利を認めると同時に,責任をも求めるようになりつつある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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