短報
症状の軽度な精神分裂病患者の前頭葉機能および記憶機能
著者:
稲山靖弘12
中嶋真里5
徳永陽子5
水野貴史3
豊田裕敬3
左光治4
木戸上洋一5
所属機関:
1バイエル薬品株式会社,開発/臨床研究
2前,大阪医科大学神経精神医学教室
3大阪医科大学神経精神医学教室
4大阪医科大学中央検査部
5新淡路病院
ページ範囲:P.975 - P.977
文献購入ページに移動
近年Bogertsら1)が精神分裂病において左半球の海馬を含む内側側頭葉の小さいことを報告したことから,分裂病の側頭葉,辺縁系機能障害との関連が,また湯浅ら14)がSPECTで感情鈍麻など陰性症状の強い分裂病患者にhypofrontalityを認めたことから前頭葉機能との関連が注目されている。これまで精神分裂病における一連の神経心理学的検査により,検査成績が健常人を下回ることが,中でも特に記憶障害,前頭葉機能障害が指摘されている。神経心理学的検査の成績の低下は,分裂病過程の重症度に相関するという報告があるが,これまでの研究ではあらかじめ前頭葉機能障害,記憶機能障害の存在が予想される比較的症状の重い症例が対象に選ばれていた。また,精神分裂病には亜型が存在し,臨床遺伝学的研究から遺伝的異種性も指摘されている。このため神経心理学的異常が,症状の軽度な精神分裂病患者においても検討される必要があると考えられた。
そこで今回我々は,外来通院または開放病棟に入院している分裂病患者において前頭葉機能検査および視覚,聴覚記銘力検査を行ったので若干の考察を加えて報告する。