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文献詳細

雑誌文献

精神医学39巻9号

1997年09月発行

特別寄稿

エコノモ脳炎と精神神経学—病気の自然史と医学の苦闘

著者: 原田憲一1

所属機関: 1東邦大学医学部 2武田病院

ページ範囲:P.991 - P.1007

文献概要

■はじめに
 その脳炎は第一次大戦下のウィーンに忽然と立ち現れ,Economo, C. von15)によって直ちにそれとして捕捉された。その後この脳炎は2,3年のうちに地球全体を席捲したが,まもなく再び忽然と姿を消した。あとにパーキンソニズムと器質性人格障害の大勢の犠牲者が数十年にわたって残された。この脳炎がなお人類の間に潜伏していて時々散発しているかどうか,定かでない。特に我が国ではこの脳炎の伝播時,今いう日本脳炎が各地に流行を繰り返しており,その混淆の中で医師たちは診断に苦闘した。
 エコノモ脳炎の歴史をたどっていると,生物の自然史について思いが及ぶ。ヒトの病気の歴史はヒトという生物種自身の自然史であり(病気を持っていることもヒトの自然であるのだから),また病原体がいる場合にはその目に見えない小さい生物の自然史でもある。目に見えない微生物の自然史は,病気を通してしか私たちに見えてこない。病気の場合もちろん治療,予防の人為的努力が加わるから,そうでない場合の自然史を変えるだろうが,エコノモ脳炎の場合そのことによる変形はほとんどなかった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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