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雑誌目次

論文

精神医学4巻1号

1962年01月発行

雑誌目次

創行3周年記念 座談会

日本精神医学の将来に望む

著者: 新福尚武 ,   島薗安雄 ,   江副勉 ,   黒沢良介 ,   西尾友三郎 ,   今泉恭二郎 ,   三浦岱栄

ページ範囲:P.3 - P.30

 三浦 それではせんえつながら私が司会をさせていただきます。実は皆様のご後援とご協力によりまして,誕生いたしました椎誌「精神医学」が来年の1月で満3周年を迎えようとしております。幸いにして順調な歩みを進めてきたわけでございますが,また一方においては多少マンネリズムにおちいつたという傾向もなきにしもあらず,編集委員といたしましても,いろいろ苦心しておるんでございますが,満3周年を迎えるにあたりまして,何か特集号を出したいと,それで1つのエポックを画するような特集号を出したいという案が委員会でもちあがつたのでございます。さて,いままでにもたびたび特集号を出しておりますが,どのようなテーマを選んだらよいかということについて,いろいろ苦心したのでございますが,思いきつて現在の日本の精神医学のありかたを批判して,将来の動向を語るといつたような漠然とした,かつ大問題なのでございますが,そういう事柄を将来,日本の精神医学を背負つていかれる皆様に,忌憚なくあるいはまた思う存分に抱負を語つていただきたいという考えのもとに本座談会をもつた次第でございます。

展望

分裂病患者の治療

著者: 立津政順

ページ範囲:P.33 - P.39

 本日,新任早々,歴史ある本同門会の学会***の演壇に立つことのできましたことを,私非常にうれしく存じております。先日,清田さんから,夜の宴会の前に集談会を開きたいというお話をうかがい,遊ぶ前にも学問することを忘れまいとするこの同門会員の意気ごみに感激いたしまして,私もその場で出題を申し出たのであります。それが,この分裂病患者の治療という演題であります。しかし,まとめてみますと,なんら新しい知見はみられず,常識的なことばかりで,いささか気がはやりすぎたものと後悔しているところであります。しかし,これは本日の同門会の1つの余興としてお聞きいただくことにしまして,もしまた何かと教えていただいたり,ご批判願えますれば,幸いと存じます。

精神分析学の展望(5)—主として自我心理学の発達をめぐって

著者: 小此木啓吾

ページ範囲:P.41 - P.56

第4部
 病的世界における自我の障害
 いささか筆者は,自我心理学の発達を回顧するのあまり,第1部(5月号)でのべた,精神医学者としてのS. Freudの本来の出発点であつた病的世界に立ち戻ることが遅くなつてしまつた。精神分析学は,操作主体の操作的自覚の道程における主体的な精神療法的人間理解の発展を手がかりとして,より具体的に全体的な人間像を構成し,理論体系のうちに概念づけようと努力しつづけ,やがて,S. Freudの自然科学的心理学(物理化学的思考模型)から,Hartmannの自我心理学(進化論的生物学的思考模型)を経て,Eriksonの歴史的・社会的思考模型にまで,それ以前の諸理論・諸概念を生かし,その同一性を発展させてきたが,つねにその基礎には臨床的実践が存し,その成果を精神医学における病的現象の解明と治療的実践のうちに具体化し,生かす努力をつづけてきたのである。

研究と報告

Methopromazineの精神疾患患者への使用経験

著者: 柴原堯

ページ範囲:P.59 - P.63

Ⅰ.緒言
 精神疾患の治療は最近における新しい薬物の出現により薬物療法がさかんに行なわれるようになり,それぞれ病状の改善に効果をあげている。しかしながらこれらの薬物療法に用いられているChlorpromazineやPerphenazineらのPhenothiazine系化合物は,精神疾患の急性期,あるいは周期性精神病のごとく比較的経過が短かく,また容易に寛解しうる疾病に対しては少量で著明な効果を示すが,発病以来長年月を経過し病状が慢性化して固着した病者に比較的大量を長期間にわたって投与する場合には,特有な種々の副作用の出現潜在的肝機能障害,あるいは血液像の変化を招来することが多い。
 MethopromazineはChlorpromazineの-Clが-OH3(methoxy)により置換されたPhenothiazine誘導体であり,したがつて中枢神経系および自律神経系に対しても,Chlorpromazineときわめて類似の作用をおよぼすといわれている1)4)5)

神経症治療に対するNeopromaの使用経験

著者: 木戸幸聖 ,   溝口博美 ,   松山厳 ,   鶴岡孝人 ,   鈴木克己 ,   小田良彦

ページ範囲:P.65 - P.69

 外来治療中の神経症患者37例にMethopromazine(Neoproma)を投与し,不安感,焦燥感の鎮静,睡眠障害の改善,頭痛,肩こり,動悸などの精神身体症状の軽減などにかなりの効果のあることを知りえた。この効果は不安神経症に対してとくに著明であり,抑うつ状態には効果の期待はうすい。なお副作用として,ねむけ,倦怠感などが時にみられるが,いずれも軽微である。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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