文献詳細
文献概要
展望
精神分析学の展望(5)—主として自我心理学の発達をめぐって
著者: 小此木啓吾1
所属機関: 1慶応義塾大学神経科教室
ページ範囲:P.41 - P.56
文献購入ページに移動第4部
病的世界における自我の障害
いささか筆者は,自我心理学の発達を回顧するのあまり,第1部(5月号)でのべた,精神医学者としてのS. Freudの本来の出発点であつた病的世界に立ち戻ることが遅くなつてしまつた。精神分析学は,操作主体の操作的自覚の道程における主体的な精神療法的人間理解の発展を手がかりとして,より具体的に全体的な人間像を構成し,理論体系のうちに概念づけようと努力しつづけ,やがて,S. Freudの自然科学的心理学(物理化学的思考模型)から,Hartmannの自我心理学(進化論的生物学的思考模型)を経て,Eriksonの歴史的・社会的思考模型にまで,それ以前の諸理論・諸概念を生かし,その同一性を発展させてきたが,つねにその基礎には臨床的実践が存し,その成果を精神医学における病的現象の解明と治療的実践のうちに具体化し,生かす努力をつづけてきたのである。
病的世界における自我の障害
いささか筆者は,自我心理学の発達を回顧するのあまり,第1部(5月号)でのべた,精神医学者としてのS. Freudの本来の出発点であつた病的世界に立ち戻ることが遅くなつてしまつた。精神分析学は,操作主体の操作的自覚の道程における主体的な精神療法的人間理解の発展を手がかりとして,より具体的に全体的な人間像を構成し,理論体系のうちに概念づけようと努力しつづけ,やがて,S. Freudの自然科学的心理学(物理化学的思考模型)から,Hartmannの自我心理学(進化論的生物学的思考模型)を経て,Eriksonの歴史的・社会的思考模型にまで,それ以前の諸理論・諸概念を生かし,その同一性を発展させてきたが,つねにその基礎には臨床的実践が存し,その成果を精神医学における病的現象の解明と治療的実践のうちに具体化し,生かす努力をつづけてきたのである。
掲載誌情報