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特集 睡眠 Symposium・2
睡眠の神経生理—Activated Sleepに関与する神経機構についての一考察
著者: 山本研一1 城戸良之助1
所属機関: 1塩野義製薬研究所神経薬理学研究室
ページ範囲:P.821 - P.830
文献購入ページに移動脳波は睡眠深度の指標の1つである。すでに明らかにしたようにネコまたはイヌが覚醒から睡眠にいたるまでの基本的な脳波像は行動との対比から6水準に分けることができるが31)33),その1つであるactivated sleep4)はphase paradoxale14),rhombencephalic phase of sleep16)18),又脳波像は多少異なるがヒトのnull stage2),early morning sleep6),stage-3 variant20)とも同意義のもので,行動は明らかに眠つているにかかわらず新皮質の電気的活動はあたかも覚醒時と同様の低振幅速波を示し,同時に海馬からは規則正しい海馬律動波が記録され24)26)27)31)脳波像をみるかぎりでは覚醒時と容易に区別のつきにくい睡眠の1つの状態をさしている。睡眠の経過中,このように古くから知られている睡眠時脳波とはまつたく異質の脳波像を呈する時期が在ることはかなり以前から知られているが2)5)6)8)睡眠時脳波に関する従来の記載が整然としており,Magounたち21)の偉大な業績やGreenたち7)の海馬像と行動の対応の立場とはまつたく相いれない現象のせいかDement4)の記載までは大きな注意がはらわれなかつたようである。
近年ポリグラフによる睡眠の多角的研究が進むにつれて16)17)23)27)activated sleepがヒトおよび動物の睡眠の経過中かなり重要な部分を占めることが明らかにされたので9)10)11)〜18)20)23)26)27)脳波と睡眠深度の対応,脳波と行動の分離,あるいはその神経生理学的機構について,睡眠時脳波をもう一度ふりかえつてみる必要が生じてきた。
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