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雑誌詳細

文献概要

特集 睡眠 Symposium・3

睡眠と脳波

著者: 古閑永之助1

所属機関: 1東京大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.831 - P.840

I.はじめに
 近年の睡眠の生理学的研究は脳波を中心に行なわれており,とくに動物を用いた覚醒系の研究はめざましい発展をとげている。しかし人間の睡眠について考えるとき,これらによつてえられた知見はまだ概括的なものであつて,私たちの素朴な知識欲を満たすにはなお遠いものである。むしろ人間の睡眠について,より綜合的な検索,とくに精神生理学的な研究はいままさに新たな発展の扉が開かれようとしている段階であろう。また患者の睡眠状態あるいはその夜の心理生理状態を理解すべき資料はきわめて乏しく,精神疾患の多くが不眠をともない,その有無やその程度が疾患のおもさの重要な判定基準になつていることからもこの研究の推進は急務であろう。
 このような現状において,KleitmanおよびDement2)3)5)らによる"activated sleep"やそれにともなつて出現する"rapid eye movement(以下REMとする)"の発見は画期的で,睡眠研究に魅力的な新領域を開拓したものである。彼らの用いた方法はさほど特殊なものではなく,こんにちごく平易に用いうるポリグラフ的方法なのであるが,長年にわたる人間の睡眠研究の蓄績と,さらに一晩中連続して記録し観察するという,現象に対する素直な接近の態度などによつてこの優れた成果をもたらしえたものと思われる。
 私たちの立場は東大神経科における意識障害の神経生理学的研究の流れの中にある。その一環として睡眠に関するポリグラフ的研究を行なつており,こんにちまではおもに正常な睡眠を対象として,できるだけ忠実に記録することを心がけてきた6)。ここではまず初めに一夜の睡眠の全体的経過を概観し,ついで"睡眠の深さ"というものに対する再検討を,さらに幾つかの問題点と応用の可能性などについてのべることにする。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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