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文献詳細

雑誌文献

精神医学4巻11号

1962年11月発行

文献概要

特集 睡眠 Symposium・4

脳疾患と睡眠

著者: 佐野圭司1

所属機関: 1東京大学脳神経外科脳研究所

ページ範囲:P.847 - P.860

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I.はじめに
 秋元脳波学会長より著者に与えられた題名は「脳疾患と睡眠」であるが,ここでは睡眠の臨床像にはいつさいふれないで,脳の器質的疾患およびてんかんのさいに行なう睡眠時脳波記録がいかにその疾患の診断に役だつかを中心として論述したいと思う。
 第1表に示すようにこの10年たらずの間にわれわれのところで行なつた脳波検査例の約7割をなす5385例(1962年4月)に睡眠時脳波の検索がなされている。これが今回の報告の基礎をなしているわけである。われわれが日常もつとも多くの場合行なつているのは,まず覚醒時脳波を調べ,ついで過呼吸時の変化をみ,さらに睡眠時脳波を描記し,それでも変化があらわれなければPentylenetetrazolやBemegrideの静注による賦活を行なう方法である16)。第1表の右端の異常所見発見率はこれらすべてを総括した場合の数字である。第1表の上の3段すなわち棘波群疾患ではまず覚醒時の脳波検査を行ない,ついで過呼吸時の脳波変化をみるところまでであらわれた異常所見の率を単純検査異常所見(%)として表現し,その症例をさらに睡眠におちいらせたときに認められる異常所見率を睡眠時異常所見(%)として示してある。たとえば陰焦点性てんかんは単純検査では76%しか異常を示さないのに,これを眠らせると70%に異常が認められるようになるがごときである。外傷,腫瘍,血管障害などの徐波群疾患ではこれらの数字は意味がないので省略した。なぜならばこれらの疾患では異常所見は棘波群疾患におけるごとく単に棘波があるかないかなどというように単純なものではなく,ある種の異常変化(たとえばmonorhythmic delta)は覚醒時にのみみられ,睡眠時には消え去ること自体がひとつの所見なのであり,したがつてその睡眠時脳波に何パーセント異常波が出,覚醒時に何パーセント異常所見が認められるなどという個々のことはあまり問題とはならず,それらを綜合してどれくらいの率で異常が見出されるかが重要なのだからである。
 睡眠時脳波の診断学的意義を知るためには,まず覚醒時脳波にみられるいろいろな異常が睡眠の深さにともなつてどう変化してゆくかを知らなければならない。そしてそのためには正常な睡眠時脳波の各様相をとらえ分類しておく必要がある。このことについてはただいま古閑博士の詳細なご報告があつたばかりであり,その他Loomisら(1937),Blakeら(1937),Gibbs夫妻(1950)らの業績が数えられるが,ここではつぎに記すように清水教授らによつて試みられた分類23)を用いることにした。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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