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文献詳細

雑誌文献

精神医学4巻2号

1962年02月発行

文献概要

紹介

“Founders of Neurology”から(1)

著者: 安河内五郎1

所属機関: 1福岡県精神衛生相談所

ページ範囲:P.121 - P.123

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Alois Alzheimer(1864〜1915)
 F. H. Lewey
 Alzheimerは器質的精神病の脳病変に関する独自の研究をした人として忘れてならない存在である。19世紀の終りごろの指導的精神医学者達は,精神病を解剖学的に探求することの価値を疑問としており,好んで心理学的方法によつてこの「思考の中枢」を究明しようとする風潮があつたが,なかでただ1人だけ例外があつた。それは「精神科のLinneaus」といわれるEmil Kraepelin(1856-1926)である。Kraepelinは彼が所長となつた精神医学研究所の設計にあたつて,病理解剖部門に今までにないほどの設備を考えたし,また病理とその関連領域の研究担当者としても,当時最も有為な人と目された人材を指名したが,その中の1人がAlzheimerであつたのである。
 病理解剖学研究に対するKraepelinのこのような信念は,彼が最初から抱いていたものではない。Osker Vogtによると,1894年にVogtがForelのことづてをもつてHeiderbergにKraepelinを訪ねたとき,Kraepelinに将来の計画のことをきかれ「精神病の脳病理をやろうと思う」と答えたところ,Kraepelinは「君のprognosisは不良だね,精神科に解剖なんて役立たんよ」といつたそうである。恐らくその時のKraepelinの頭には,彼の師von Guddenの兎での実験や人間のsubthalamusに関するForelの研究が,精神病の解明に一向役立つていないという考えがあつたのであろう。ところが1905年にKraepelinがBerlinにVogtを訪ねたときは,事態はだいぶ変つてきた。KraepelinはそのころすでにVogtおよびBrodmannの皮質の細胞構築に関する発表を読んでおつたし,標本の検討も十分綿密にやつたので,結果として彼もまた脳病理の重要性を認めざるを得なくなつたものと思う。そして1916年MunichでVogtに会つた時はついにこういつたそうである――「自分の研究所の将来はNisslとBrodmannのものだ」。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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