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精神医学領域におけるPhysical Therapyの趨勢(2)—第3回世界精神医学会議に出席して
著者: 広瀬貞雄1
所属機関: 1
ページ範囲:P.415 - P.422
文献購入ページに移動 New Yorkから大西洋を横断してLisboa(Portugal)に飛んだのが6月24日であるが,ご承知のとおり,LisbonはPsychosurgery発祥の地であり,PsychiatryのProfessorであるH. J. Barahona-FernandesとNeurosurgeryのProfessorでCentro de Estudos Egas MonizのDirectorをしているAlmeida Limaの大歓迎をうけ,6月26日の午後3時から同講堂でPsychosurgeryの講演をさせられた。幸い夏休み前であつたのでLisbon大学医学部の教授や助教授が多数聴講してくれ,いろいろと質問があり反響があつた。その記事が翌朝の新聞DIARIO de NOTICIASにのり,また,Portugalの医学雑誌O Médico(No. 516,July 20,1961)にもその要旨が掲載された。
Barahona Fernandesは若いころドイツに留学し,KleistやKurt Schneiderの所でGehinpathologieやPsychopathologieを勉強した人で,Lobotomy後の人格変化をregressive Syntonisierungとよんだのも彼である。Montrealでも彼は,PsychopharmacologyのChairmanをやらされたり,Atypical endogenous psychosesのpanel discussionで発言したりして活躍していた。LimaはかつてMonizの片腕となつて働いた人で,1935年にMonizのideaを実行に移して,初めてprefrontalleucotomyを人間に行なつたのも彼の偉大なる業績のひとつである。現在ここではLobotomyはほとんど行なわれておらず,Moniz以来Portugal全体で350例くらいしか手術されていないという話を聞いてちよつと意外に思つたのであるが,Monizの偉大な業績は1949年度のNobel賞受賞を記念して1953年に新築されたHospital de Santa Maria(1,600床からなるLisbon大学付属病院)の中にCentro de Estudos Egas Monizとして永久に残されており,資料室には,Antonio Egas Moniz. För hans upptäckt av den Prefrontala Leukotomiens Terapeutiska värde vid vissa psykoser.(精神病に対して価値のある前頭葉白質切截術の発見に対して)。Stockholm den 27 October 1949. Kungl Karolinska Mediko-Kirurgiska Institutetと記されたNobel賞を初めとして数々の賞状が飾られており,彼の考案したLeucotomeやAngiographyに使用した器具が大切に保有され,血管撮影を行なつた100枚近く行のみごとなレントゲン写真が順序よく並べられていた。彼の生前の著書の中には多くの専門書のほかに,AVIDA SEXU-ALを初めとして,wineやトランプに関する著書もあり,中年のころ革新派内閣の外務大臣をつとめたという変わつた経歴をもつ活動家としての面目躍如なるものが偲ばれた。Babinski宛の書簡の中にParkinsonismusのTremorやRigiditatに対する脳手術の構想が記されたものが保存されていたのをみて,かかる症候群に対する昨今のStereotaxic encephalotomyの急速な進歩を考えると感慨ひとしおのものがあつた。しかし,彼の旺盛な意欲も,政治力によつてそのロイコトミーですら迫害を受けたのである。すなわち,反対党に所属する精神科の教授Sobral Cid (1941歿)によつて,あらゆる角度から,あらゆる手段をもつて迫害を受けたための影響が尾を引き,発祥の本国ポルトガルでは,わずかに350例をもつて正にピリオドをうたれようとしているが,彼の功績はNobel賞に輝やき,世界中で追試されたのは,すでに諸家の熟知するところである。Monizの最初からの共同研究者Limaは,Portugalが世界に誇れるものはFish, wine and leucotomy!であると私に語つた。
Barahona Fernandesは若いころドイツに留学し,KleistやKurt Schneiderの所でGehinpathologieやPsychopathologieを勉強した人で,Lobotomy後の人格変化をregressive Syntonisierungとよんだのも彼である。Montrealでも彼は,PsychopharmacologyのChairmanをやらされたり,Atypical endogenous psychosesのpanel discussionで発言したりして活躍していた。LimaはかつてMonizの片腕となつて働いた人で,1935年にMonizのideaを実行に移して,初めてprefrontalleucotomyを人間に行なつたのも彼の偉大なる業績のひとつである。現在ここではLobotomyはほとんど行なわれておらず,Moniz以来Portugal全体で350例くらいしか手術されていないという話を聞いてちよつと意外に思つたのであるが,Monizの偉大な業績は1949年度のNobel賞受賞を記念して1953年に新築されたHospital de Santa Maria(1,600床からなるLisbon大学付属病院)の中にCentro de Estudos Egas Monizとして永久に残されており,資料室には,Antonio Egas Moniz. För hans upptäckt av den Prefrontala Leukotomiens Terapeutiska värde vid vissa psykoser.(精神病に対して価値のある前頭葉白質切截術の発見に対して)。Stockholm den 27 October 1949. Kungl Karolinska Mediko-Kirurgiska Institutetと記されたNobel賞を初めとして数々の賞状が飾られており,彼の考案したLeucotomeやAngiographyに使用した器具が大切に保有され,血管撮影を行なつた100枚近く行のみごとなレントゲン写真が順序よく並べられていた。彼の生前の著書の中には多くの専門書のほかに,AVIDA SEXU-ALを初めとして,wineやトランプに関する著書もあり,中年のころ革新派内閣の外務大臣をつとめたという変わつた経歴をもつ活動家としての面目躍如なるものが偲ばれた。Babinski宛の書簡の中にParkinsonismusのTremorやRigiditatに対する脳手術の構想が記されたものが保存されていたのをみて,かかる症候群に対する昨今のStereotaxic encephalotomyの急速な進歩を考えると感慨ひとしおのものがあつた。しかし,彼の旺盛な意欲も,政治力によつてそのロイコトミーですら迫害を受けたのである。すなわち,反対党に所属する精神科の教授Sobral Cid (1941歿)によつて,あらゆる角度から,あらゆる手段をもつて迫害を受けたための影響が尾を引き,発祥の本国ポルトガルでは,わずかに350例をもつて正にピリオドをうたれようとしているが,彼の功績はNobel賞に輝やき,世界中で追試されたのは,すでに諸家の熟知するところである。Monizの最初からの共同研究者Limaは,Portugalが世界に誇れるものはFish, wine and leucotomy!であると私に語つた。
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