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文献詳細

雑誌文献

精神医学4巻7号

1962年07月発行

研究と報告

Tetrabenazine使用による麻薬中毒者禁断症状の治療について

著者: 植山喬1

所属機関: 1総武病院

ページ範囲:P.489 - P.492

文献概要

Ⅰ.緒言
 麻薬中毒者は自律神経嵐とよばれる禁断症状の激しさのために病院で治療を行なうにあたつても他の精神疾患に比しもつとも手をやかせるものであるが,従来その治療法としては麻薬の漸減療法と即時禁断療法とがあり,前者としては比較的習慣性の少ないMethadoneなどが用いられ,後者の方法としては持続睡眠療法,電撃療法あるいは最近ではReserpinやChlorpromazineなどの薬物を用いる方法が行なわれているが,これらの方法をもつてしても相当苦痛をともなうのが通常である。Tetrabenazineは1957年F. Hoffmann-La Roche研究所のC. SchniderおよびC. Broceiが脳中Serotonin含量を低下させるReserbin以外の化合物を探究中に1,2,3,4,6,7-Hexahydro 11 b H-benzo[α]quinolizineの三重環状構造が種々の興味ある薬理作用を示すAlkaloidの主要成分をなしていることを発見したが,これらのAlkaloidを解明する過程において分解や合成により無数のBenzo[α]quinolizineをえたが,そのうち若干のものが鎮静および麻酔強化作用を有していることを明らかにし,その中でも2-Keto-5-isobutyl-9, 10-dimethoxy-1,2,3,4,6,7-hexahydrobenzo[α]quinolizineがもつともすぐれた効果を示すことを見出し,1959年Voelkelらが臨床上応用した。これがTetrabenazineで第1図に示すような構造式を有しているが,その後諸家により精神病の治療に用いられてその効果が認められているが,おもな薬理的臨床的特徴としては
 1.すぐれた鎮静,抗精神病作用を有し,とくに幻覚,妄想,不安,緊張などが著明に認められる急性および慢性の精神病および神経症に有効である。
 2.作用は脳幹に選択的で末梢への影響が少ないため,末梢への良好な耐薬性を示す。また血圧降下作用はない。
 3.作用発現は速かで,持続時間が短いため蓄積の危険がない。
 4.嗜眠作用がほとんどなく,過度に抑うつにすることもない。
 5.禁忌はほとんど認められておらず,電撃療法との併用もさしつかえない,などであり,またReserpinと比較して
 1.脳内でのみSerotoninおよびNoradrenalinを遊出し,末梢組織からはこれらのAminを遊出しない。したがつて腸管からのSerotonin遊離にもとづく下痢や,交感神経端枝のNoradrenalinの減少にともなう血圧低下をきたさない。
 2.Reserpinのごとく脳Serotoninを完全に遊離するのでなく,脳のSerotoninをほぼ1/2に減少させる。
 3.発効時間が速かでまた投与後速かに代謝されて24時間内に完全に排泄される。
 4.Reserpinに比し作用時間が短い。
 5.Reserpinの鎮静作用に拮抗する。ことなどが認められているが,私はその国産品たるRubigenを麻薬中毒者の禁断症状の治療に使用してきわめて良好な成績をえたのでその結果を報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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