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研究と報告
女子精神病者の性周期にともなう精神症状の変化について—第1報 臨床統計
著者: 山下格1 中沢晶子1 篠原精一1 吉村洋吉1 伊藤耕三1 高杉かほる1
所属機関: 1北海道大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.543 - P.548
文献購入ページに移動興奮状態で入院した女子患者はたいてい月経の最中か直前である。筆者が精神科医になりたてのころ,ある年長の看護婦がこともなげにこういうのをきいたことがある。半信半疑で気をつけてみていると,どうやらそのようであつた。このことは最近,Mall1)によつて統計学的に確かめられた。またそのほかにも,精神病像が月経周期に一致して急激に移り変る症例をしばしば経験した。一応,月経精神病とよんだり,最近よくいわれる非定型精神病に含めてみたりしたが,しかし考えてみるとはなはだすつきりしない。月経期に精神的変化をきたすことは,正常婦人にもしばしばみられる現象である。とすると問題は,精神病者でもそれと同じことがおこるというだけのことであろうか。あるいはその程度がとくにはなはだしいのであろうか。しかしその時期にだけ幻覚や昏迷があらわれるような場合がある。これをどのように考えたらよいであろうか。またそれらの変化は,月経という身体機能と病態生理のうえでどのような因果関係をもつのであろうか。これらのどの問いにも,われわれはまだ満足のいくような説明を聞いていない。
そこでわれわれは,さきに発表した精神疾患の内分泌学的な研究と平行して,性周期にともなう精神病像の変化を臨床的に検討することにした。まず最初にこころみたのは臨床統計である。第1報ではおもにその結果について説明することにしたい。つぎに変化の著明な症例を選んで,詳しい観察や問診を行ない,精神症状の性状を分析した。いわば精神病理の検討であつて,詳細は第2報にしるす。さらにこのような精神病像の変化が,月経という身体現象と病態生理の面でどんな関係をもつているかを調べたが,この問題は他にも発表したので,いつさい省略することにした。
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