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文献詳細

雑誌文献

精神医学4巻9号

1962年09月発行

文献概要

研究と報告

うつ状態に対するChlorprothixene(TraQuilan)の効果

著者: 桜井図南男1 西園昌久1

所属機関: 1九州大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.659 - P.664

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I.はじめに
 近年,精神科領域の治療上にかなり大きな進歩があつたもののひとつとして,うつ状態に対する薬物療法がある。近代的な精神治療薬の最初のおとずれは,Phenothiazine化合物であるChlorpromazineの精神科領域への導入であるが,その後,周知のように種々の薬物が精神治療薬として登場し,それら薬剤のうち抗うつ作用をもつものが,うつ状態の治療にこころみられてきた。いわゆる抗うつ薬はその作用のうえから 1)Neuroleptics,2)Stimulants,3)Energizers,4)Thymolepticsに分類される。それぞれ,作用に優劣があり,目標症状にも差異があり,いちがいに抗うつ作用の優劣を論じるわけにはいかない。
 これらの精神治療薬は,初めPhenothiazine核をもつたさまざまの誘導体の研究から,しだいにPhenothiazine核そのものの変換をこころみる方向とともに,また,Phenothiazine化合物とはまつたく無関係の薬物の研究の方向へと進んできている。Phenothiazine核の変換による新たな薬物として,抗うつ作用をもつものにImipramine,Amitriptylineがあるが,ここにのべるChlorprothixene(TraQuilan)もその1つで,Phenothiazine核の窒素が炭素に置換されたものである。
 ChlorprothixeneはF. Hoffman-La Roche社で合成され,臨床的にうつ状態に対して特異的な抗うつ作用をもち,興奮,不安,不穏,不眠などを緩和し,自律神経系の過敏性もゆるめる効果が認められ,Thymolepticな作用とNeurolepticな作用とがあり,薬理作用上,広範囲にわたるSpectrumをもつといわれる。
 私たちは,エーザイよりChlorprothixene(TraQuilan)の提供を受け,これをうつ状態にこころみたので以下その成績について報告しよう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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