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研究と報告
文献概要
【抄録】阪神大震災3か月後より半年間にわたり激震地帯東部にある大学病院精神科受診者においてPTSDの発生を調査した。精神病圏や痴呆などを除く疎通性良好な対象患者186名中,DSM-IV診断基準に適合したPTSDは6例であり頻度は3.2%であった。諸外国の震災報告例と比較して低頻度だが,調査対象群の設定や復旧システムによる差異が考慮され,災害精神医学の疫学的研究上の問題が示唆された。また,PTSDの4症例に関してはうつ病とのcomorbidityを認めたが,これらにおいてはPTSDがうつ病経過上の部分症状を構成しているものとも解釈された。PTSD症例は診断基準に適合してもその疾患単位性は必ずしも保証されない可能性と,我が国におけるPTSD概念の詳細な検討の必要性を指摘した。
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