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文献詳細

雑誌文献

精神医学40巻11号

1998年11月発行

文献概要

短報

クロザピンの投与により多飲が改善した慢性期分裂病の1例

著者: 高田秀樹1 高橋義人1 久住一郎1 小山司1

所属機関: 1北海道大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.1209 - P.1212

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 精神分裂病患者の慢性期においてよくみられる多飲(polydipsia)は,心因性多飲,強迫的多飲とも呼ばれ,低ナトリウム(Na)血症や低浸透圧血症を合併することが知られている。重症例では意識障害,けいれん発作を伴う水中毒を惹起し,時に致命的となりうる。松田7)によると,一般に神病院入院患者の10〜20%に多飲がみられ,4〜12%が低Na血症を呈し,3〜4%に水中毒が発生しているという。
 一方,多飲に関する薬物療法の報告はいくつかみられるが,最近まで治療法として確立したものはなかった。しかし,Leeら6)が,1991年に精神分裂病患者の多飲がクロザピン(CLZ)によって軽快した初めての症例を報告して以来,次々に追試が行われ,その有効性が確認されつつある1,2)。CLZは1960年代にスイスで開発された薬物であり,いわゆる非定型抗精神病薬のプロトタイプとされている。特に1980年のKaneらの報告4)で,治療抵抗性の精神分裂病に対する有効性が確認されたため脚光を浴び,我が国でも1995年より臨床試験が開始されている。今回,我々は慢性期分裂病患者の多飲が,CLZの治療抵抗性精神分裂病に対する臨床前期第Ⅱ相試験(以下治験)中に軽快した1例を経験した。本邦における最初の症例となるため,ここに報告し,若干の考察を試みた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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