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精神分裂病治療におけるインフォームド・コンセントに関するアンケート調査

著者: 藤原豊1 石津すぐる2 本田輝行1 田中有史3 中島豊爾3 黒田重利3

所属機関: 1恵風会高岡病院 2国立岩国病院精神科神経科 3岡山大学医学部附属病院精神科神経科

ページ範囲:P.1217 - P.1223

■はじめに
 従来,我が国の精神科臨床では,他の医学領域に比べ,精神分裂病患者の意思決定能力の障害を理由にしたパターナリズムが広く浸透し,インフォームド・コンセント(以下IC)の導入には医師の側の抵抗が強かった。しかし,欧米の医療におけるICの普及1)は,精神科領域においても例外ではなくなってきた。1991年12月の国連総会決議「精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則」を受けて7),我が国では公衆衛生審議会が,「精神障害者に対するICの在り方等について検討すること」とする答申を出した。日本精神神経学会においても,ICの要件である患者の同意能力,代諾制度,強制入院下での治療の在り方,などの問題は今後の検討課題としつつ,いま必要なことは治療者が患者に対して適切な情報を伝え,治療者と患者との合意を形成しつつ治療を行うことであるとの観点から「精神科治療者のガイドライン」が提起された11)。つまり,精神科領域でのICの問題は,是非の議論からいかにこれを導入するかの具体的模索の段階へと進展してきた。一方,精神療法の立場から言えば,このようなことは臨床場面で個々の医師が試行錯誤を繰り返しながら従来から行ってきたことであり,広義にはICを得ることは精神療法そのものの過程であると言われている13,18)。しかし,ICを狭義にとらえると,告知の内容と同意の意味について,医療関係者の中に一定の合意が得られているとは言いがたく,何をどこまでどのように説明するのか明確な基準はいまだにないという意見もある4)。そこで,現在の我が国の精神科医師がどのようなICに関する認識を持っているのかをこの時点で把握しておくことは,意義のあることと思われる。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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