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資料

英国における精神医学研究倫理委員会—ロンドン大学精神医学研究所(およびモズレー病院)の研究倫理委員会の運用規定

著者: 五十嵐禎人1 武井教使234

所属機関: 1東京都立松沢病院 2ロンドン大学精神医学研究所心理医学部門 3東京大学医学部保健学科精神衛生学教室 4現,浜松医科大学精神神経科

ページ範囲:P.1225 - P.1234

〈はじめに〉
 人を対象とした医学的研究に関して,ニュルンベルグ綱領やヘルシンキ宣言などの国際的倫理規定は,研究対象者のインフォームド・コンセントを原則とすることを定めている。研究や治験を行うに当たって,患者や研究対象者に十分な説明を行い,その方法・目的の理解,納得を得た上で,自発的な参加への同意を得ることは,倫理的に必要不可欠な手続である。臨床治験については,我が国では厚生省の医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)があり,日米欧医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議での合意に基づき改訂作業が行われた。
 精神医学においては,対象とする疾患の性質上,患者や研究対象者の同意能力に問題がある場合がある。インフォームド・コンセントをはじめとした研究の倫理に関する諸問題は,他の医学領域以上に複雑である。近年我が国においても諸外国の例を参考に各研究機関に研究倫理委員会が設けられている。しかしながら精神障害者を対象とした臨床研究の特殊性について十分な配慮がなされているとは言い難い。研究倫理委員会で審査され議論されるのは,臨床治験や遺伝子関連の研究といった日常臨床とはやや異なる研究についてのものが主である。既存の日常臨床に使用される薬物についての研究,心理検査や脳波,脳画像(CT,MRIなど)など確立された検査技術を用いた研究,精神療法に関する研究など精神科の日常臨床の延長上にあるような研究については,日本精神神経学会が臨床研究における倫理綱領3)を公表しているものの,その研究の倫理に関して十分な議論がなされているとは言えない現状にある。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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