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文献詳細

雑誌文献

精神医学40巻12号

1998年12月発行

文献概要

シンポジウム がん,臓器移植とリエゾン精神医学—チーム医療における心のケア

総説:コンサルテーション・リエゾン精神医学の課題

著者: 保坂隆1

所属機関: 1東海大学医学部精神科

ページ範囲:P.1319 - P.1323

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■コンサルテーション・リエゾン精神医学の歴史と現状
 米国では1902年にAlbany総合病院に初めて精神科が設置され,1939年に「リエゾン精神医学」という用語がBillingsによって初めて使われた。その後,徐々に発展・定着してきた「リエゾン精神医学」も,これまでに2回の大きな発展の時期を経て成長してきたことが知られている。第1は,1930年代のロックフェラー財団からの資金援助であり,全国で数か所の施設において常勤のリエゾン精神科医の配属が可能になった。第2は1970年代のNIMH(National Institute of Mental Health)からの研究基金の捻出であり,リエゾン精神医学領域の研究に従事できるスタッフが確保され,おびただしい数の臨床研究が報告され,数々の臨床モデルが提唱された時期である8)(表1)。
 そして,このような流れの中で,我が国には1977年に京都で開かれた国際心身医学会で,欧米,特にアメリカからの精神科医によりこの用語が輸入・紹介されたのである。その後,数年のうちに全国的にこの用語が広まり,各学術集会でもシンポジウムが組まれたり,学術誌にも特集が組まれた。しかし,米国で公的・私的基金などの経済的なバックアップがあって飛躍的な発展を遂げたことからもわかるとおり,我が国でも医療経済的な面からいえば,このコンサルテーション・リエゾン精神医学にも弱点がある。そのためか,現状では,総合病院といってもその半数近くに精神科が設置されているにすぎず,さらにその半数にしか精神科病床を有した総合病院はないという事実がある。しかし,1988年には我が国のコンサルテーション・リエゾン精神医学に関する専門学会である「日本総合病院精神医学会(理事長:黒澤尚日本医大教授)」が設立され,今後の発展が期待されているが,筆者は,このような我が国のコンサルテーション・リエゾン精神医学の歴史を「導入期」・「普及期」として振り返り,1988年以降を,今後の発展に期待を込めて,「発展期」と名づけている(表2)。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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