文献詳細
シンポジウム がん,臓器移植とリエゾン精神医学—チーム医療における心のケア
文献概要
腎不全に対する人工透析治療は多くの患者の生命を救い,生存率もしだいに向上して,現在では透析歴20年を超える患者もある。しかし透析には週3回数時間の拘束,厳しい水分制限や食事制限など様々な生活上の制約がある。腎移植はこれらの困難を解消し,患者のQOLを著しく向上させる治療法である。しかし我が国では腎移植は欧米諸国と比べて数が少ないうえに,死体腎の提供が少なく生体腎移植の占める割合が高い。また生体腎移植のほとんどが血縁者から行われるため,移植に家族内力動が反映し,また移植によって家族内力動に変化が生じる。本稿では腎移植をめぐる患者(レシピエント)およびドナーの心理ならびに家族内力動について検討する。筆者は社会保険中京病院に勤務していたとき,1984年から1994年の10年間,同病院に入院し腎移植手術を受けたすべての患者に入院中週1回回診し,移植医および病棟看護婦と定期的にカンファランスを持った。本稿は主としてその時の経験に基づくものである。(その経験の一部はすでに別のところ4,5)に発表してある。)
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