文献詳細
特集 精神病像を伴う躁うつ病および分裂感情障害の位置づけ—生物学的マーカーと診断・治療
非定型精神病,精神病像を伴う躁うつ病,分裂感情障害の位置づけ—遺伝学および神経生理学的立場より
著者: 米田博1
所属機関: 1大阪医科大学神経精神医学教室
ページ範囲:P.135 - P.139
文献概要
精神病像を伴う躁うつ病,ことに気分と調和しない精神病像を伴う躁うつ病や分裂感情障害は,国際的な診断基準であるICD-10およびDSM-IVの中で規定されているものの,従来よりその位置づけには多くの異論がある。Gershonら4)は遺伝学的な研究から,分裂感情障害を躁うつ病の1つのスペクトルの中でとらえている。これに対して分裂感情障害の家族内には分裂病の負因が高いとする報告もある。またKendler5)は,気分と調和しない精神病像を伴う感情障害は感情障害の1亜型と考えられると報告しているものの,我々の調査では,家族内負因の変異が定型的な感情障害とは明らかに異なり,異種(heterogeneous)な疾患であることが示唆される。
さらに我が国では,症候学的に極めて近似した非定型精神病概念が,満田8)による遺伝学的な研究から,分裂病,躁うつ病,真性てんかんとは異なる1つの疾患としてnosological(疾病学的)に規定され,内分泌学的,神経生理学的研究も加わり発展してきた10)。この非定型精神病が,精神病像を伴う躁うつ病や分裂感情障害とどのような関係にあるのか,問題も多い。
そこでここでは,まず臨床遺伝学的な研究を基礎とした非定型精神病の概念を紹介し,さらに我々がこれまでに行ってきた臨床遺伝学的,分子遺伝学的,神経生理学的な研究を紹介し,非定型精神病,精神病像を伴う躁うつ病,分裂感情障害の位置づけを考えてみたい。
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