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特集 精神病像を伴う躁うつ病および分裂感情障害の位置づけ—生物学的マーカーと診断・治療
分裂感情障害研究の方法論的批判
著者: 北村俊則1
所属機関: 1国立精神・神経センター精神保健研究所社会精神保健部
ページ範囲:P.163 - P.165
文献購入ページに移動 精神疾患をいかに分類するかという課題について,生物学的指標biological markerのこれまでの貢献は顕著なものがあった。今回の主題である分裂感情障害schizoaffective disorder(SAD)についても,4名のシンポジストの発表にあるように,当該疾患の他疾患(例えば精神分裂病や純粋の感情障害)からの峻別や,分裂感情障害内部の亜型分類について,有用な情報が与えられている。1990年までの文献検索を行った北村3)は,SADの亜型分類subclassificationの外的指標external criteriaとして症状,家族歴,転帰,治療反応性,検査結果を取り上げ,SADの躁型(双極型),主として感情病性,非慢性のものが純粋な感情病に近く,抑うつ型(単極性),主として精神分裂病性,慢性のものはむしろ精神分裂病に近いと結論した。本シンポジウムでは1990年以降の新しい知見が紹介された。
しかし,生物学的指標の技術的進歩とは裏腹に,SADをめぐる疾病学的nosologicalな議論は残念ながら停滞しているように思える。精神分裂病—分裂感情障害—感情障害という一連の疾患群を,どのように分けるのが最も妥当であるかについての進展はみられていない。なぜこの分野の疾病分類に進展がみられないかを考えると,そもそも19世紀から20世紀にかけて非器質性重症精神疾患を精神分裂病と躁うつ病の2つに分類したことに根源的誤謬があったと考えることができよう。
しかし,生物学的指標の技術的進歩とは裏腹に,SADをめぐる疾病学的nosologicalな議論は残念ながら停滞しているように思える。精神分裂病—分裂感情障害—感情障害という一連の疾患群を,どのように分けるのが最も妥当であるかについての進展はみられていない。なぜこの分野の疾病分類に進展がみられないかを考えると,そもそも19世紀から20世紀にかけて非器質性重症精神疾患を精神分裂病と躁うつ病の2つに分類したことに根源的誤謬があったと考えることができよう。
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