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文献詳細

雑誌文献

精神医学40巻3号

1998年03月発行

展望

摂食障害の長期的転帰とcomorbidity

著者: 加茂登志子1 笠原敏彦2

所属機関: 1東京女子医科大学精神医学教室 2国立国際医療センター精神科

ページ範囲:P.234 - P.246

文献概要

■はじめに
 Hsu45,46)とSteinhausen81,83)はanorexia nervosa(以下AN)の予後予測因子を含めた追跡調査follow-up studyの先駆的存在であるが,この両者がそろって,10年に満たない短い期間に自身の総論の再評価を試みたことからも,この研究領域の混乱した状況と資料の膨大さをうかがい知ることができよう。Russell76)は転帰調査の結果がまちまちである要因として,主に(1)ケース選択におけるバイアスと,(2)診断基準,方法論のバイアスの問題を指摘したが,Hsu46)はこれに(3)調査期間のバイアスを追加している。
 ケース選択における問題として,Vandereyckenら96)は摂食障害の治療で知られる専門的なセンターには長期化した難治例が紹介される傾向にあったり,またセンター側でもすべての患者を受け入れるわけではないこと(例えば病歴の長い患者,複雑な病歴を持つ患者など治療に困難が予測される患者の排除など),また治療やfollow-upからドロップアウトをするケースが比較的多いものの,これらの症例についてはほとんど調査されないことを挙げている。診断基準に関して問題を複雑にしているのは主としてbulimia nervosa(以下BN)の登場である。周知のようにBNはRussell77)によって提案された用語であるが,その診断基準はDSM-IIIのbulimia以来混乱し(BNという用語が採用されたのはDSM-III-Rからである),あたかも内因性精神病におけるKraepelinの二分法のようにANとBNの境界は常に論争の的であった。またFairburnや笠原のように,相互移行的,重複的な臨床形態として1つのスペクトラムを形成しているとする立場をとるものも多い。方法論としては他の精神疾患領域の研究と同様,多面的なバッテリーを駆使したprospective研究が望まれている。また調査期間については,ANが周期的な軽快と再発の起伏を伴う経過をとる慢性疾患であり,治療の直後の改善がそのまま直接的に長期の治療成果に反映するとは限らないことから,最低4年間のfollow-upがMorgan & Russell65)によって推奨されている。これは,BNにもまた言えることであろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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