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文献詳細

雑誌文献

精神医学40巻6号

1998年06月発行

文献概要

研究と報告

ステロイド投与により不機嫌状態が改善したACTH単独欠損症の1例

著者: 久保田統1 清水栄司1 児玉和宏1 堀江篤哉2 野口義彦2 小松尚也1 野田慎吾1 岡田真一1 山内直人1 斎藤康2 佐藤甫夫1

所属機関: 1千葉大学医学部精神科 2千葉大学医学部第二内科

ページ範囲:P.629 - P.636

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 【抄録】症例は39歳男性。意欲低下,易疲労性,記銘力障害とともに,易刺激性,易怒性の激しい不機嫌状態のため,妻に対する暴力がみられた。全身強直間代発作後,精神運動興奮を認め,入院先で昏睡状態となった。血清Na 103mEq/lと重度の低Na血症から,副腎機能不全が疑われ,精査目的で転院した。頭部MRIでempty sellaが認められ,脳波は高度びまん性徐波を示し,内分泌検査でACTH検出感度以下を呈したことから,ACTH単独欠損症と診断された。CRF連続負荷試験の結果から,視床下部障害が示唆された。転院直後からステロイドの投与を開始し,第7病日には易刺激性,易怒性が消失し,血清Na,脳波ともに正常化した。その後,ステロイド中断時に血液検査や脳波に異常の認められない不機嫌状態が生じたが,ステロイド補充のみの治療により速やかに改善した。本例は,視床下部障害に伴うステロイド欠乏が不機嫌状態を引き起こしたと考えられるACTH単独欠損症と考えられ,視床下部性あるいは下垂体性の障害部位と精神病像の関連性について文献的考察を加えて,報告した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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