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文献詳細

雑誌文献

精神医学40巻6号

1998年06月発行

文献概要

短報

自己臭恐怖の症状形成—非妄想性の1例から

著者: 井上洋一1 水田一郎1 佐藤寛2 小笠原将之3

所属機関: 1大阪大学医学部精神医学教室 2星が丘厚生年金病院神経科 3国立大阪病院神経科

ページ範囲:P.637 - P.639

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 自分の身体から臭いが出て周囲の他人から忌避されるという特異な訴えを持つ自己臭恐怖は青年期に好発する疾患である。従来は症状の特徴から重症の対人恐怖,森田神経質の特殊型,あるいは関係妄想の存在により分裂病との関連が問題にされてきた。しかしこのいずれにも該当しない中間的性質を持っているために,植本ら1)は思春期妄想症としてまとめている。笠原ら2)は自己臭体験が神経症から分裂病,まれにはうつ病にまで現れうることを指摘し,最も多いのは境界例あるいは重症神経症であるとしている。今回我々は自己臭恐怖と全く同じ構造の症状を訴え,妄想的確信のみを欠く症例を経験した。この症例は発症に至るまでの心的過程を自覚し語ることができた。一般に自己臭恐怖患者は身体の異常に妄想的確信を持ち発症への心理的要素の関与を否定しているために,発症に至るまでの心理については詳しく語られることがない。本症例は自己臭恐怖症の発生の心的メカニズムについて貴重な示唆を与える症例であると考え報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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