icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学40巻7号

1998年07月発行

文献概要

巻頭言

医学における科学性と臨床性

著者: 神庭重信1

所属機関: 1山梨医科大学精神神経医学講座

ページ範囲:P.690 - P.691

文献購入ページに移動
医学の自然科学化
 欧州でルネッサンスの効果が医学に及んだのは16世紀であった。コペルニクスの地動説に代表されるように,自然科学の勃興の波を受けて,観察と実験に基づく医学の在り方が模索され始めたのがこの頃である。例を挙げれば,ヴェサリウスを頂点とする解剖学の隆盛がそれである。人体の精密な構造が暴かれた時に,古代西洋医学の権威は失墜したと言われる。
 17世紀は,ガリレオ・ガリレイによる自然の数学化が行われ,天文学や物理学の大発見が相次いだ時代である。学問の目的は自然を支配することにあった。厳密な帰納法が医学の研究にも必要であると説いたフランシス・ベイコンの科学的世界観や,ルネ・デカルトに代表されるように,こころと体とを分離したものとみなす心身二元論の立場に立つことで,体は固体および液体の集合体であり,必ず物理的なあるいは化学的な自然法則で解明できるシステムであるとする考えが一般化した。その最たる成功例が,英国の医師ウィリアム・ハーベイによる血液循環の発見であると言われる。彼は,血液が心臓の生理学的な運動により体内を循環していることを実験と計測で説明した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?