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文献詳細

雑誌文献

精神医学40巻7号

1998年07月発行

文献概要

展望

セロトニン・ドーパミン・アンタゴニスト抗精神病薬の臨床的課題

著者: 黒木俊秀1 田代信維1

所属機関: 1九州大学医学部精神科

ページ範囲:P.692 - P.702

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■はじめに
 1950年代初頭のクロルプロマジンの精神科治療への導入に始まり,1970年代半ばよりはドーパミン仮説を有力な根拠に展開されてきた抗精神病薬研究の歴史において,1990年代におけるセロトニン・ドーパミン・アンタゴニスト(serotonin-dopamine antagonist;SDA)抗精神病薬の登場は新たなターニング・ポイントとなりつつある。その発端となったのは,1988年,米国のKaneら32)が報告したハロペリドール抵抗性の精神分裂病に対するクロザピン(clozapine)の有効性の検証であった。極めて精密にデザインされたハロペリドール抵抗性分裂病(対象患者=267名)に対する二重盲検試験の結果,クロルプロマジンは4%の患者にしか有効でなかったが,クロザピンは実に30%の患者に有効であったことが報告された。続く1989年,Meltzerら45)はクロザピンをはじめとする錐体外路系副作用(extrapyramidal symptoms;EPS)の頻度が少ないいわゆる非定型抗精神病薬の薬理学的プロフィールには,ハロペリドールなどの定型抗精神病薬と比較して,in vitroにおけるセロトニン(5-HT)2A受容体遮断作用がドーパミン-D2受容体遮断作用よりも相対的に高い特徴があることを報告した。したがって,抗5-HT2A力価:抗D2力価比の高い抗精神病薬は,古典的な定型抗精神病薬に比較して,EPS発現の頻度が少なく,かつ優れた抗精神病作用を有することが期待された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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