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研究と報告
文献概要
【抄録】23歳でbulimia nervosaを発症し,その約1年半後に多重人格症状を合併した症例を報告した。典型的な過食症状とともに,多重人格症状としては,幻声と記憶の欠落およびその間の患者の意に反した行動が特徴的であった。過食する主体は主人格であり,従来報告されている独立した「過食人格」は認めなかった。過食症状と多重人格症状の統一的な理解のためには,解離概念が有用と考えられ,過食症患者の少なくとも一部では,その精神病理に解離が関与している可能性を支持する症例と考えられた。発症に影響を与えた思春期の心的外傷体験としてひき逃げ体験があり,発症の直接的背景としては職業上の挫折から生じた同一性の危機状況が考えられた。
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