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文献詳細

雑誌文献

精神医学40巻7号

1998年07月発行

短報

Risperidoneの投与により著明な体重増加を認めた1症例

著者: 谷川真道12 西島康一1 鎌田芳郎1 片山仁1 宮崎博史1 加藤敏1 石黒健夫1

所属機関: 1自治医科大学精神医学教室 2現,田崎病院

ページ範囲:P.777 - P.779

文献概要

 Risperidoneは,本邦においては,ドーパミンD2受容体拮抗作用とともに,強力なセロトニン5-HT2受容体拮抗作用を有しており,臨床的には他の抗精神病薬と比較すると錐体外路系の副作用が非常に少なく3),精神分裂病の幻覚や妄想などの陽性症状ばかりではなく,自発性の低下,感情の平板化,引きこもりなど陰性症状にも効果を有する有用で安全な薬剤2,3,5)であるといわれている。しかし,副作用の1つとしてまれではあるが体重増加があり,このことはあまり知られていない。実際症例報告に関しても,海外において少数の報告1,2)しかなく重度の体重増加の報告は2例6)のみであり,本邦において現在のところ体重増加に関しての症例報告は1例もない。
 今回我々は,軽度の精神発達遅滞者1名に,被注察感,作業所の指導作業員に対する被害関係念慮のほか自発性の低下,感情の平板化,引きこもりが認められた症例にrisperidone 2mg/日を投与したところ,精神症状の軽快化とともに重度な体重増加を認め,投与中止に伴い体重の増加がとまり減少傾向になった症例を経験した。しかも本症例は,遺伝性の肥満や摂食障害などの食事性の疾患は認められなかった。日常の食事摂取量に関してもほとんど変化がみられず,精神症状の軽快化とともに運動量は徐々にではあるが増えていった。治療薬も抗精神病薬ではrisperidoneのみの単剤投与であったことより,体重増加の原因としてrisperidoneによる薬剤性の体重増加が強く考えられたので,ここに報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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