icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学40巻8号

1998年08月発行

文献概要

シンポジウム 災害のもたらすもの—阪神・淡路大震災復興期のメンタルヘルス

企業職員層における阪神・淡路大震災復興期のストレス要因

著者: 飛鳥井望1 三宅由子1

所属機関: 1東京都精神医学総合研究所・社会精神医学研究部

ページ範囲:P.889 - P.895

文献購入ページに移動
 欧米における疫学研究の結果では,戦闘参加兵士やレイプ被害者など,明らかな心的外傷(トラウマ)を体験した高危険集団においても,外傷後ストレス障害(Post-traumatic stress disorder;PTSD)はさほど高頻度に発生するわけではない22)。DSM-IVによれば,一般人口調査におけるPTSDの生涯有病率は1〜14%であり,高危険者(戦闘参加兵士,噴火災害被災者,暴力犯罪被害者など)中における有病率は3〜58%とされている1)。一方,心的外傷の内容により精神的影響の経過はやや異なるともいわれる。一般に災害は地震や洪水などの自然災害と事故などの人為災害に大きく分けられるが,これまでの報告によれば,被災者にみられる精神的影響は,自然災害の場合では2年以上を経過するとほぼ消褪するのに比べ,人為災害ではより遷延しやすいようである4)
 我が国では,ことに1995年阪神・淡路大震災以後,被災者のPTSDが専門家やマスコミの注目を集めるところとなった。しかし,被災者にみられた精神症状に関する報告をみるかぎりでは,震災後早期の急性ストレス症状は広く認められた6)が,PTSDの割合はおしなべて低いようである。ただし多くの報告では,調査対象は医療機関や相談機関の受診者・相談者であり,また診断は個々の臨床家の個別診断によるため,当然ながら診断の精度は異なるものと考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?