研究と報告
精神分裂病者を持つ家族の感情表出と疾病理解との関連
著者:
兼島瑞枝1
長崎文江1
古謝淳1
山本和儀1
仲本晴男1
所属機関:
1琉球大学医学部精神神経科学講座
ページ範囲:P.945 - P.949
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【抄録】精神分裂病患者と過ごす家族の感情表出(EE)と患者の再発率が関連することが指摘され,EEを用いた家族研究が行われている。筆者らは家族介入の一助とするため,精神分裂病患者の家族の感情表出と疾病理解との関連を検討した。EEの評価はFMSS(Five Minute Speech Sample)を用い,疾病理解の評価は筆者らが作成した評価尺度を用いた。評価尺度には疾患名,病因,症状,治療についての項目が含まれており,4段階で評価した。対象は慢性精神分裂病患者の家族25名であった。FMSSによる評価の結果,high EEが12名(48.0%)で,その下位分類では「批判」7名,「情緒的巻き込まれすぎ」5名であった。「批判および情緒的巻き込まれすぎ」でhigh EEと評価された者はいなかった。high EE群の家族はlow EE群と比べて疾患についての理解に乏しく,病気の原因を心理社会的要因に帰属することや家族のかかわりが重要であるという項目で肯定的な回答をした者の割合が有意に低かった。