icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学41巻1号

1999年01月発行

特集 記憶障害の臨床

精神科臨床と記憶研究

著者: 濱中淑彦1 仲秋秀太郎1

所属機関: 1名古屋市立大学医学部精神科

ページ範囲:P.6 - P.15

文献概要

序論
1.記憶概念の細分化と問題
 近年の記憶理論は,認知心理学の導入により急速な展開を遂げ,1970年代以前の短期/長期記憶の単純な二分法を超え,記憶の概念は著しく拡張してきた。この二分法に対する批判から作働記憶(working memory;WM)の概念(Baddeleyら,1974)が登場し,他方,長期記憶はエピソード記憶(episodic memory;EM)と意味記憶(semantic memory;SM)に大別された(Tulving,1972)。長期記憶は,言語化が可能で,意識的想起を必要とする過程である宣言的/顕在記憶(declarative/explicit memory)と,意識的想起を必要としない過程である非宣言的記憶/潜在記憶(nondeclarative/implicit memory)に区別される48)。最近では,Squireら48)は,非宣言的記憶/潜在記憶を細分化し,各下位の記憶系の基盤にある神経基盤を想定している(図)。またTulving50)は,各記憶系が系統発生・個体発生的な階層的関係(表)にあると考え,手続き記憶(procedural memory;PrM)が発生史的に最も古い記憶であり,その後に,知覚表象系(perceptual representation system;PRS)50),SM,一次記憶,EMなどが出現してきたと想定している。さらにEMは,想起が繰り返されると,次第にSMの特徴を持つようになり(Cermak,1984),新しく形成されるSMは,EMの一部として獲得される可能性がある46)といった仮説が提唱され,SMとEMの概念の区分が単純ではないことが明らかになってきた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら