icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学41巻1号

1999年01月発行

特集 記憶障害の臨床

手続き記憶とその障害

著者: 博野信次1 森悦朗1

所属機関: 1兵庫県立高齢者脳機能研究センター臨床研究科

ページ範囲:P.41 - P.47

文献概要

手続き記憶とは
 手続き記憶(procedural memory)とは「技能を繰り返し経験,練習することにより,その操作の規則性を学習,獲得するもので,個々の運動や操作の結果等の記憶にはよらないもの」(CohenとSquire4))であり,これらの技能の獲得は,操作を繰り返していく中で所要時間や誤り回数の減少という形で表現される。手続き記憶は系統発生的にも個体発生的にも最も古い記憶であると考えられている25)。
 手続き記憶の概念には歴史的な変遷があり,当初は陳述記憶declarative memoryの対極に位置するものとして定義され,この中にはプライミングprimingや単純な古典的条件付けsimple classical conditioningなども包含されていた25)(図a)。プライミング現象とは,経験により一度見せられた単語とか形などが,意識に記憶が呼び戻されることなしに可能性のある選択肢の中から高い確率で選択されるものをいい,プライミングが心像想起を問題にしている以上,手続き記憶の中に含めるのは理屈に合わないという指摘もあった。Squireは1988年の総説26)の中で,無意識的に情報を獲得する記憶学習能力の異質な集合を非陳述記憶nondeclarative memoryという用語でまとめ,手続き記憶は非陳述記憶の一部であり,技能学習能力skill learning abilityを表現するとし,プライミングやadaptation-level effectなどとは区別した(図b)。本稿では,この後年のSquireらの立場に立ち,手続き記憶を技能skillの学習能力のみを表す用語とし,プライミングや古典的条件付けなどは含めないものとする。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら