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文献詳細

雑誌文献

精神医学41巻10号

1999年10月発行

文献概要

巻頭言

うつ病について思うこと

著者: 木下利彦1

所属機関: 1関西医科大学精神神経科

ページ範囲:P.1028 - P.1029

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   お母さまは
   大人で大きいけれど。
   お母さまの
   おこころはちいさい。
   だって,お母さまはいいました,
   ちいさい私でいっぱいだって。
   私は子供で,
   ちいさいけれど,
   ちいさい私の
   こころは大きい。
   だって,大きいお母さまで,
   まだいっぱいにならないで,
   いろんな事をおもうから。
   (金子みすゞ「腱毛の虹」JULA出版局より)
 金子みすヾの「こころ」という詩である。非常に感性豊かですばらしいが,反面小さい頃から母の“こころ”をケアーしてきたであろう歴史が想像され,かわいそうに思えてならない。彼女の豊かな“こころ”と健気な“こころ”の両面が表れている私の大好きな作品の1つである。金子みすヾは,永らく“幻の童謡詩人”とされていたが,1人の児童文学者の熱意により,世に知らしめられ,近年非常に評価が高まっている。生涯に500編余の作品を発表し,26歳で自らその命を絶った人である。親の勧めで意に添わぬ結婚をし,夫の放蕩と無理解により疲弊しうつ状態に陥り,3歳の娘を残し世を去ってしまった。3月に大阪で開かれた,「金子みすヾの世界」展を見に行った直後に,原稿の依頼があり,「うつ病」について少し書かせていただく。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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