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文献詳細

雑誌文献

精神医学41巻10号

1999年10月発行

文献概要

試論

心的外傷後ストレス障害PTSDは解離性障害か恐怖症か

著者: 漆原良和1

所属機関: 1市立岸和田市民病院精神神経科

ページ範囲:P.1117 - P.1126

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はじめに
 心的外傷後ストレス障害PTSD(以下PTSDと略す)という概念は1980年にDSM-IIIで初めて登場した。きっかけは当時アメリカが抱えていた深刻な社会問題であった。ベトナム戦争帰還兵によく見られる精神神経症状が,既存の精神医学的疾病分類になじまず,新しい疾病概念が必要とされた。ベトナム戦争帰還兵の約15%がPTSDに罹患したと報告されている44)。さらにもう1つの重大な社会問題,レイプや幼児期の性的虐待の被害者(主に女性)に高率に同様の症状群がみられたことがPTSDの概念の確立を後押しした。同国の女性の約25%がレイプ被害経験者という社会状況23)では,この精神神経症状を見過ごすことはできなかった。その後,同様の症状が,それ以外の個人的な出来事でも幅広くみられることがわかり3),PTSDの概念は急速に精神科臨床に普及している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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