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雑誌目次

論文

精神医学41巻11号

1999年11月発行

雑誌目次

巻頭言

精神医学における科学性,知性,倫理性

著者: 前田久雄

ページ範囲:P.1142 - P.1143

 精神医学を科学たらしめようとする試みは,それが前世紀末に現在につながる形で呱々の声をあげて以来,精神医学が抱える大きな課題でありますが,まだ,その段階をいくらも昇っていないというのが現状ではないでしょうか。確かに神経科学や分子生物学の目をみはるような発展の恩恵に浴し,抗精神病薬,抗うつ薬,抗不安薬などの薬理作用や薬物代謝などは動物実験レベルで詳細に解明されており,アルツハイマー病,精神分裂病など多くの精神疾患の遺伝子解析も精力的に進められ,ある程度の知見の集積がなされてきています。MRIやPETなど画像診断の技術革新もめざましく,痴呆性疾患の鑑別などに大きな威力を発揮しており,機能性精神病や神経症でも様々な所見があることが報告されています。
 しかし,それでは抗精神病薬によるドーパミン伝達の遮断が,どのような機序で幻覚・妄想や精神運動興奮に奏効するのでしょうか。巨視的にみても,単一のドーパミン受容体の遮断だけでは抗精神病作用そのものを説明できないことはすでに明らかにされていますが,複数のドーパミン受容体遮断を考慮に入れたとしても,その受容体での作用が臨床効果を現すに至る経路は明らかでありません。薬理学上の特徴だけで効率的な薬剤選択ができるわけでもありません。抗うつ薬や抗不安薬においても,その間の事情は同様でありましょう。たとえば,セロトニンの再取り込み阻害作用がなぜ抗うつ効果を発揮するのでしょうか。もちろん,それ以外の薬理作用をもつ薬剤の抗うつ効果がセロトニンへの作用単独では説明できないのも周知の事実であります。メジャーな精神疾患で遺伝子診断ができるものはまだありません。また,同様に画像で診断がつくものもありません。DSM-IVでも明らかなように,ほとんどの精神疾患では,いまだに症候群モデルとしての診断体系が用いられています。

展望

高齢社会における精神医療と精神科医の役割

著者: 柄澤昭秀

ページ範囲:P.1144 - P.1154

はじめに
 近年わが国の人口の高齢化が急スピードで進み,現在なお進行中であることは,今や周知のことである。わが国の65歳以上人口(高齢人口)が500万人を超えたのは今から約40年前であるが,それから20年後の1980年には,1,000万人を超え,現在はすでに2,100万人を超えている。将来推計によれば高齢人口のピークは今から約40年後で,その数は3,300万人に達するものと予測されている。わが国を含め高齢先進国における高齢人口の増加は主として住民の健康度の向上によってもたらされたものであり,その意味では喜ばしい現象といえるのであるが,反面,このような高齢者の増加はそれをもたらした医療や社会に対して様々な問題を提起することになった。高齢社会にかかわる問題は多々あるが,ここではわが国の実情を踏まえて,精神医療や精神保健に求められる新たな課題や精神科医の役割について考えてみたい。なお,わが国の人口の高齢化は少子化,若年人口の減少によって著しく加速されている。また近年,家族構成や家族機能の変化,高学歴化が目立ち,個人の意識や価値観にも変化が生じている。この際これらのことが高齢社会に及ぼす直接,間接の影響についても考慮されなければならない。

研究と報告

遷延性離脱症候群を呈したアルコール依存症12例の検討

著者: 清野忠紀

ページ範囲:P.1155 - P.1161

【抄録】 アルコール依存症者に急性離脱症状消褪後,引き続きまたは数か月の無症候期を経て多彩な症候群が発現する。欧米でも報告は少なく我が国では皆無に近い。症状は不眠,不安焦燥,抑うつ,分裂病様症状,無為好褥,意識障害で,持続期間は数か月から数年に及ぶ。本症候群をKryspin-Exnerは慢性禁断症候群と呼び,Kissinは遷延性離脱症候群とし,病因を間脳の機能障害と推定した。筆者は過去10年間で典型的な12例を経験したが,2例は自殺した。
 本症候群の病因は,長期の大量飲酒とアルコール禁断による脳の複数部位に機能障害が発生し,急性離脱症状の軽快後もある程度機能障害が残存し,長期に潜在化し,なんらかの契機で顕在化し,症候群が発症すると考えた。発症のメカニズムとして,Flashback現象,Kindling現象,逆耐性現象などのいずれにも当てはまらず,この解明は今後の重要な研究課題であると考える。

外来通院中の慢性精神分裂病患者の10年予後

著者: 鶴田聡

ページ範囲:P.1163 - P.1170

【抄録】 長期外来通院中の慢性精神分裂病患者131例の10年予後をprospectiveに調べた。初めの3年間(I期)の症状や生活適応レベルなどをスケールを用いて評価し,再発に注目しながら経過を観察し,最後の3年間(II期)に同じ項目を同じスケールで再評価した。症状や適応レベルは悪化傾向を示し,72%は再発した。症状はI期,II期で相関は高かったが,適応レベルは変化に富んでいて,退院の見込みのない入院に至る例も少なくなかった。II期の適応レベルは観察中の再発回数や症状悪化の頻度と相関が高く,またI期の症状では幻聴や抑うつ気分や心気症とかなりの相関があった。その他予後に関連する因子としては,年齢,遺伝負因,コーピングや仕事の有無を挙げることができると考えられた。
 長期外来通院中の慢性の分裂病患者やその家族に病気の見通し(予後)を聞かれることは多いが,あいまいな返事しかできないのが現状である。発病直後の患者の5〜10年予後に関しては,発病前の社会適応や性格,結婚歴や職業歴,発病契機や発病様式,抑うつ症状の有無(抑うつがあれば予後が良い),治療開始までの期間(ラグタイム),などが重視されるが,慢性期の患者の予後は断片的にしか研究されていない。筆者は外来通院中の慢性分裂病患者の長期予後をprospectiveに調べることにした。

分裂病患者家族に対する長期間小グループの家族ミーティング

著者: 高田治 ,   北西憲二 ,   榊かおり ,   春日未歩子

ページ範囲:P.1171 - P.1177

【抄録】 1992年7月から実施している家族ミーティングという小グループによる集団力動を利用した分裂病患者家族への援助について報告する。我々は,このプログラムを月に1回実施し,12回継続の言語を用いた集団精神療法であると理解している。初回から3〜4回の参加までにグループ場面で示された家族の特徴から,アクティブタイプ(A-type)とパッシブタイプ(P-type)に分類した。また,グループプロセスを通した家族の変化について症例を呈示して考察した。患者の変化やEE(expressed emotion)との関連についても論じ,従来の心理教育と比べたこのプログラムの意味についても考察を加えた。

初老期・老年期発症の軽症うつ病における頭部MRI高信号領域

著者: 北村秀明 ,   豊岡和彦 ,   不破野誠一

ページ範囲:P.1179 - P.1183

【抄録】 本研究の目的は,無症候性のMRI T2高信号領域の程度を,軽症で経過の短い初老期・老年期発症のうつ病患者において調べることにより,高信号領域を高齢者のうつ病発症の要因として考えることができるかどうかを明確にすることであった。対象は60歳以降に発症した軽症うつ群19名(平均年齢71.9歳)と,筋緊張性頭痛群26名(平均年齢68.9歳)で,この両群のMRI画像を比較した。結果は,うつ病群は頭痛群に比べて深部白質の高信号領域(WMH)を有する患者が有意に多く(p=0.02),WMHのgradeが有意に高かった(p=0.005)。WMHが高齢者の軽症うつ病の発症に関与している可能性が支持された。

生活環境要因が知的評価スケールに及ぼす影響—アルツハイマー型痴呆,脳血管性痴呆,対照群を用いて

著者: 小川栄一 ,   柿木昇治 ,   菊本修 ,   好永順二

ページ範囲:P.1185 - P.1190

【抄録】 社会保険広島市民病院神経科・老人性痴呆疾患センターに来院した患者595例からアルツハイマー型痴呆(DAT)群,脳血管性痴呆(VD)群,対照群を選択,N式精神機能検査(N式)を施行し,知的評価スケールと生活環境要因との関連を検討した。対照群では「年齢」,VD群では「家庭内での役割」,DAT群では「学歴」,「同居形態」,「家庭内での役割」がN式得点の低下と関連のある要因として選択された。すなわち,DAT群では,「高学歴」,「一人暮らし」,「家庭内での役割あり」で有意に知的機能が高いという結果が示された。この結果より,DATの罹患を予防するためには,①若い時に高い教育を得ていること,②子どもと同居せず自立すること,③生活の中で自己のするべき役割があること,が重要であることが示唆された。

気分障害の症状・経過に及ぼす自殺企図の影響

著者: 福永貴子 ,   坂元薫

ページ範囲:P.1191 - P.1196

【抄録】 自殺企図のため入院した気分障害40例と対照群40例を対象に,入院前後の精神症状変化をDSM-IVの重症度分類に従って調査した。自殺企図群の精神症状改善率38%は対照群の改善率18%に比べ有意に高かった。自殺企図手段や自殺企図時の精神症状の重症度と精神症状変化の有無との間には有意の関連はなかった。意識消失を伴う場合には病相switchが有意に起こりやすかった。精神症状改善の要因としてカタルシス効果,ショック療法的効果が示唆された。改善例の87%では改善期間は3か月未満であった。うつ状態再燃の要因として,精神科的治療の希薄化,早期社会復帰,自殺企図の抗うつ効果の減衰が示唆され,抑うつ再燃による再企図に留意すべきと思われた。

躁状態を呈したてんかんの1症例

著者: 富田義之 ,   本岡大道 ,   石田重信 ,   石井浩喜 ,   前田久雄

ページ範囲:P.1197 - P.1203

【抄録】 23歳,男性。5歳時に全身のけいれん発作が出現し,当科を受診。結節性硬化症,症候性てんかんと診断され薬物療法が開始となった。16歳時,不眠をきっかけに精神運動興奮,著明な脱抑制状態など躁状態が出現し当科に入院となった。入院中および退院後に躁状態は計4回認められたが,いずれも症状発現前および症状期に発作が出現していた。SPECTでは症状期,症状寛解期とも脳全体の低灌流が認められ,特に左前頭葉,両側の外側および内側側頭葉で脳血流が低下していた。発作焦点と関連しない両側側頭葉の低灌流は精神症状との関連が推察された。また結節性硬化症に伴う精神症状について単純に原疾患に病因を求めることは難しいと考えられた。

Risperidone中断により誘発されるけいれん発作

著者: 岡田俊

ページ範囲:P.1205 - P.1208

【抄録】 Risperidone(RIS)8mgからperphenazine(PPZ)4mgに切り替えた2日後より4回の強直間代発作を認めた症例,RIS 3mgからclomipramine(CMI)30mgに切り替えた2日後に強直間代発作を認めた症例を報告し,けいれん発作の抑制系をめぐるセロトニン(5-HT)・ドーパミン(DA)系の相互作用について検討した。RIS中断により5-HT系,DA系の脱抑制を来した状態に,PPZによるDA系の抑制,あるいはCMIによる5-HT系の増強が加わることでけいれん発作が出現したと考えられ,RIS中断後にけいれん発作が誘発される可能性が示唆された。

維持透析を必要とする精神疾患患者2症例とそのケースマネジメント

著者: 大野直規 ,   高橋恵 ,   大谷健 ,   小阪憲司

ページ範囲:P.1209 - P.1213

【抄録】 精神症状の悪化のため入院に至った慢性維持血液透析を行っている気分障害と健忘症候群の2症例を経験した。この2症例の経験から精神症状悪化の際の維持透析を受けている精神疾患患者の問題点,さらに総合病院や大学病院の精神科の役割と問題点を考察した。神奈川県では維持透析を行っている精神疾患患者で精神症状が悪化した際,治療が可能な病院がごく一部に限られていた。その原因としては,総合病院や大学病院の精神科では閉鎖病棟がなく,したがって閉鎖的処遇が困難というハード面の問題があった。このことは神奈川県だけでなく全国的な傾向であった。また,維持透析を行っている精神疾患患者が外来通院をするためのケースマネジメントの問題についても論じた。

短報

大量のクロールジアゼポキサイドが著効したうつ病の症例

著者: 成島健二 ,   猪川和興 ,   新谷昌宏 ,   構木睦男

ページ範囲:P.1217 - P.1219

はじめに
 診断や治療が進歩した今日では,うつ病は多くの場合,薬物療法と精神療法,環境調整などの治療で寛解すると考えられている。しかし実際の診療場面では,様々な理由で治療が滞ることが珍しくない。今回筆者らは,身体合併症のため抗うつ剤による治療が困難で,電気けいれん療法でも寛解状態を維持できなかったが,クロールジアゼポキサイドの大量投与が著効したうつ病の症例を経験したので,以下に若干の考察を加えて報告する。

悪性症候群を繰り返した痴呆患者の1例

著者: 角田貞治 ,   日野博昭 ,   瀬川光子 ,   井関栄三 ,   小阪憲司

ページ範囲:P.1221 - P.1224

はじめに
 悪性症候群(neuroleptic malignant syndrome,以下NMS)は向精神薬投与患者に認められる重篤な副作用であり,錐体外路症状,自律神経症状,意識障害を主徴としている。近年,NMSの認識は高まり,早期の診断・治療により,重篤化や死亡する頻度は減少している。しかしその病態に関してはいくつかの病因仮説が提示されているが,不明の点が多い。一方,痴呆患者の行動異常に対して向精神薬が使用されるようになって以来,NMSの報告が増えているが,痴呆患者のNMSの臨床像の特徴に関する把握はいまだ不十分である。今回,筆者らは血清CPK高値以外に診断基準を満たす典型的な臨床症状を呈さないが,悪性症候群と考えられるエピソードを2度繰り返した痴呆患者の1例を経験したので,若干の考察を加え報告する。

悪性症候群に引き続き骨化性筋炎がみられた1例

著者: 小林宏 ,   岩井清 ,   小笠原俊一郎 ,   川島保之助

ページ範囲:P.1225 - P.1227

 骨化性筋炎は骨格筋などの結合組織に異所性骨化がみられるものである。悪性症候群の経過後に歩行障害を来し,X線写真で股関節部に異常骨化像を示し,骨化性筋炎と診断された症例において,骨化性筋炎の発症について悪性症候群との関係が疑われたので,ここに報告する。

トラゾドン就寝前単回投与のうつ状態に伴う睡眠障害に対する効果—睡眠導入薬を併用しない条件での用量設定試験

著者: 増子博文 ,   丹羽真一 ,   熊代永 ,   金子義宏 ,   鈴木悟 ,   沼田吉彦 ,   堀越立 ,   渡部芳徳

ページ範囲:P.1229 - P.1231

 うつ状態に伴う睡眠障害に対するトラゾドン(trazodone)就寝前単回投与の効果は,すでに数多く報告されている1,3〜5)。しかし,睡眠導入薬併用を厳密に禁じた条件の用量設定試験は行われていない。
 そこで今回我々は,イミプラミン(imipramine)毎食後併用を許すのみで睡眠導入薬を併用しない条件で,トラゾドンの就寝前単回投与量について封筒法により無作為に3群(50,75および100mg/日)に分けて用量設定試験を行った。

血管性痴呆に伴う抑うつ症状に無けいれん電気けいれん療法が奏効した1症例

著者: 宿南浩司 ,   山本茂人 ,   尾関祐二 ,   山田尚登

ページ範囲:P.1233 - P.1235

はじめに
 電気けいれん療法(ECT:Electroconvulsive therapy)は,うつ病および精神分裂病などの精神疾患に対し有効な治療法であり3,5),その安全性・有効性は治療法として十分選択されうるレベルにある。
 一方,多発性脳梗塞に伴う抑うつ状態に対する抗うつ剤の効果は乏しいとされ2),通常,治療に困難を伴うことが多い。
 今回我々は,抗うつ剤によって軽快せず,ECTにて抑うつ状態の著明な改善がみられた血管性痴呆(抑うつ気分を伴うもの)の症例を経験した。国内ではこれまでに痴呆に伴う抑うつ気分に対するECTの効果についての報告はなく,このような患者において選択すべき1つの治療法になると思われるので報告する。

資料

在ペルー日本国大使公邸占拠事件における人質家族のメンタルヘルスとその支援活動

著者: 笠原敏彦 ,   金吉晴 ,   小西聖子

ページ範囲:P.1237 - P.1242

はじめに
 在ペルー日本国大使公邸占拠事件は国民に大きな衝撃を与え多方面で様々な問題を提示した出来事であった1,6,7)。もちろんメンタルヘルスの面でも重要な課題が教示された。本事件についてはすでにマスコミなどで広く伝えられているし,我々も人質に対するメンタルヘルス活動についてその概要を報告した2〜4)。(包括的な報告は元人質たちの社会復帰上問題がないと判断された時点で行う予定である。)
 ところで,本事件において長期にわたって多様なストレスにさらされたのは,人質だけでなくその家族も同様であった。むしろ家族のほうが大変だったと述懐する人も少なくない。そうした家族のストレスの実態やメンタルヘルス上の問題点についてはこれまでほとんど注目されず,また報告もされていない。
 我々は精神科医として本事件に関与し,解放後も折をみて元人質やその家族の方々と順次お会いしてきた。1998年9月には再度現地を訪れ,事件後もペルーにとどまっている方々からお話を伺う機会を得た。本稿では,人質家族に対して行われたメンタルヘルス活動とその際聴取したストレスの概要について報告する。さらに,精神医学専門誌への公表を承諾していただいた事例を紹介し参考に供する。

私のカルテから

多発性硬化症が発見された精神分裂病の1例

著者: 大原浩市

ページ範囲:P.1244 - P.1245

 近年,画像検査の進歩に伴い,精神疾患と診断されていたものの中に,器質性の所見が発見されることがあり,認められる精神症状が,精神疾患に基づくものか,脳の器質障害によるものかの判断に迷う場合も少なくない。筆者は,精神分裂病治療中に多発性硬化症が発見された1例を経験したのでここに報告する。

「精神医学」への手紙

精神医学は本当に日進月歩?

著者: 藤川徳美

ページ範囲:P.1246 - P.1249

Neuroscienceの進歩と臨床精神医学の停滞
 医学研究は,今までの医学的介入をより良いものにすることを目的とする。つまり,疾病の原因を明らかにする(病因および病態の解明),疾病の予後を予測し予後を向上させる(疾病経過の解明と治療効果の向上)という面で従来の医学的介入をより良いものにすることが目的である。
 ほとんどの臨床医は自分の診療行動(診断行動,治療行動)に影響を与えるような学術報告を得ることを目的に,学会に出席したり,最新Journa1の論文を読む。しかし,実際には明日からの診療行動に影響を与えるような学術情報はごく稀にしか見つからず,失望することが多い。近年,臨床における診断・治療の判断場面においては,科学的な根拠(evidence)に基づいた診療を進めるべきであるというEvidence-Based Medicine(EBM)が推奨されている。しかし,現在の状況では,日常の診療行動においてEBMの実践は実際には困難であり,「研修医のA君が受け持ち患者の治療方針に悩み,Internetで論文を調べ,evidenceに基づいた新しい治療方針を見つけだす」という話も現実的とはいえない。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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