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文献詳細

雑誌文献

精神医学41巻11号

1999年11月発行

文献概要

研究と報告

外来通院中の慢性精神分裂病患者の10年予後

著者: 鶴田聡1

所属機関: 1慈光会病院

ページ範囲:P.1163 - P.1170

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【抄録】 長期外来通院中の慢性精神分裂病患者131例の10年予後をprospectiveに調べた。初めの3年間(I期)の症状や生活適応レベルなどをスケールを用いて評価し,再発に注目しながら経過を観察し,最後の3年間(II期)に同じ項目を同じスケールで再評価した。症状や適応レベルは悪化傾向を示し,72%は再発した。症状はI期,II期で相関は高かったが,適応レベルは変化に富んでいて,退院の見込みのない入院に至る例も少なくなかった。II期の適応レベルは観察中の再発回数や症状悪化の頻度と相関が高く,またI期の症状では幻聴や抑うつ気分や心気症とかなりの相関があった。その他予後に関連する因子としては,年齢,遺伝負因,コーピングや仕事の有無を挙げることができると考えられた。
 長期外来通院中の慢性の分裂病患者やその家族に病気の見通し(予後)を聞かれることは多いが,あいまいな返事しかできないのが現状である。発病直後の患者の5〜10年予後に関しては,発病前の社会適応や性格,結婚歴や職業歴,発病契機や発病様式,抑うつ症状の有無(抑うつがあれば予後が良い),治療開始までの期間(ラグタイム),などが重視されるが,慢性期の患者の予後は断片的にしか研究されていない。筆者は外来通院中の慢性分裂病患者の長期予後をprospectiveに調べることにした。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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