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雑誌詳細

文献概要

特集 児童精神科医療の課題

大学病院における児童精神科医療の現状と課題

著者: 山崎晃資1

所属機関: 1東海大学医学部精神科学教室

ページ範囲:P.1262 - P.1269

はじめに
 平成10年(1998)版の「厚生白書」9)によると,1996年の女性の合計特殊出生率(1.43),出生性比(女100に対して男105.2),死亡率(平均寿命男:77.01歳,女:83.59歳)がそのまま続いた場合,日本の人口は100年後には約4,900万人,500年後には約30万人,1000年後には約500人となり,1500年後には約1人になると推計されている。
 1998年度のわが国の合計特殊出生率は1.38となり,少子化がさらに進む中で,不登校,いじめ,校内暴力,家庭内暴力,摂食障害,薬物乱用,児童虐待など,子どものこころの問題が急増し,多様化し,しかも低年齢化する傾向にある。学級(学校)崩壊,援助交際のように,これまでの医学的常識では対応に苦慮する問題も出てきている。児童青年精神医学はますますその重要性を増しているが,わが国の大学医学部には「児童(青年)精神医学」講座がなく,大学病院においても,「児童(青年)精神科」があるのは東海大学および横浜市立大学など2,3の大学に限られている。システム的には諸外国に比して実に40〜50年の遅れをとってしまった。大学医学部に「児童(青年)精神医学」講座を持たず,標榜診療科名として「児童(青年)精神科」が認められていないのは,いわゆる先進諸国の中では日本のみであるといっても過言ではない。国際化が叫ばれている時代に紛れもない精神科医療の後進国となってしまった22)

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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