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雑誌目次

論文

精神医学41巻3号

1999年03月発行

雑誌目次

巻頭言

精神医学のパラダイム・シフト—症状論と機能論の統合を

著者: 臺弘

ページ範囲:P.232 - P.233

 世紀の転換が近く,混沌としながらも豊穣だった精神医学の100年にも変換の時期が来ているようである。このような私の感想は長年にわたる経験に促されたことであったが,臨床現場にいる者としては,WHOの国際疾患分類ICDと国際障害分類ICIDHの並列適用は特に変換の機縁の一つとなるものであった。我が国で蜂矢英彦氏が1981年に精神障害について障害性の概念(その包括概念disablementを私は特に〜性の字をつけて呼ぶ)が必要であるという重要な提言をした時,私は直ちに賛同したが,当時はICDの症状概念とICIDHの機能障害impairmentおよび能力障害disabilityとの関係が明確に整理されていなかった。元来,症状論と機能論は異なる視点から取り上げられた概念で,症状は疾患・病気の目安・目印となる現象の形態であり,障害性は脳の働き・生活の対処能力の機能的な故障である。時間軸に沿った現象過程は機能の表現でもある。両者の併用・統合のもつ意味は実際上・理念上に重要なことなのに,これまで十分な吟味を受けてこなかった。昨年私は,医師以外の治療職・リハビリ職の人々の集会で,症状記述用語を全く使うことなしに,障害論だけで分裂病の治療・リハビリ論を話してみたことがある。このひそかなたくらみがわかりやすかったと好評だったことを聞いて,症状論なき精神医学も可能であることを知って,症状論育ちの医者の私は今更ながら少し驚いた。
 内村祐之先生の名著「精神医学の基本問題」の初めの3章は,精神医学の二つの系譜に当てられている。特に第3章の「ウェルニッケとクレペリンの精神医学とその反響」は歴史的意味が深い。ウェルニッケの精神医学は彼の失語症理論の拡大されたものであり,精神反射弓と局在学の理論を実証性を欠くままに精神病にも当てはめた考想であった。彼の精神医学方面の主著Grundriss der Psychiatrieは毎章が紳士淑女諸君で始まる古風な講義録で,昔それを覗いた時には観念論の典型のように見えたが,Projektionsfeldの神経病をAssoziationsfeldの精神病と対比するなどのマイネルト以来の洞察は今も生きていると思われた。これこそは機能障害論の基本的構想とも言うべきものであった。一方,その他面に当たる現象的症状論のクレペリンの見解が,ヤスパース,K. シュナイダー路線の上に疾患分類と診断の体系を築き,それがICD,DSMへと発展したのに対して,ウェルニッケの系譜はボンヘファーの外因反応型は別として,クライストらの機能・過程による病型分類は観念論的細分化に堕して実効を生まなかった。

展望

非アルツハイマー型変性痴呆の最近の動向

著者: 小阪憲司 ,   井関栄三

ページ範囲:P.234 - P.246

はじめに
 非アルツハイマー型変性痴呆Non-Alzheimer degenerative dementias(NADD)は,アルツハイマー型痴呆(ATD:アルツハイマー病AD+アルツハイマー型老年痴呆SDAT)以外の変性痴呆疾患の総称である。この名称は,1996年7月に大阪で開催されたInternational Conference on Alzheimer's Disease and Related Disordersで,小阪が企画したワークショップ“Differential diagnosis of non-Alzheimer degenerative dementias”で初めて用いられ,その前日に行われた座談会1),さらにその秋の雑誌Dementiaの特集1)でも取り上げられた。1997年のInternational Congress of Neuropathology(Perth)でも同じ名称のシンポジウムが組まれ,その特集がBrain Pathology(1998)に掲載された3)。また,1997年の第16回日本痴呆学会(横浜)でもシンポジウムとして取り上げられ,ごく最近Kosaka & Iseki2)が我が国のNADD研究の最近の進歩について,Psychiatry and Clinical Neurosciencesに報告している。このように,NADDが最近注目を浴びているので,NADDの動向を展望することにする。
 なお,NADDは表1のように分類されるので,以下この分類に従って述べることにする。

研究と報告

精神分裂病患者のpop-out現象についての検討

著者: 島崎正次 ,   蒲池弘実 ,   井上令一

ページ範囲:P.247 - P.253

【抄録】 視覚情報処理において,前注意的過程を反映するpop-out現象に着目し,分裂病者のその特徴について検討した。対象は分裂病者16名と健常者17名とした。分裂病者ではpop-out効果が減弱している群〔P(-)群:8例〕と健常者と同等な群〔P(+)群:8例〕に明瞭に分かれ,P(+)群に比しP(-)群ではSANSにおける情動平板化,情動鈍麻において有意に高得点であった。またpop-out現象を示すpresent条件における分裂病者全例の構成図形数と反応時間の近似直線の傾きと情動平板化,情動鈍麻の得点に正の相関を認めた。以上より,分裂病の陰性症状を生み出す障害とpop-out現象の障害つまりは前注意的過程を反映する視覚情報処理過程の障害との関連が推測された。

高機能自閉症の意味的処理—絵と言語の関連について

著者: 神尾陽子 ,   十一元三

ページ範囲:P.255 - P.262

【抄録】 自閉症に特徴的な意味的処理を調べるために,言語と絵を用いた心理テストを行った。対象は高機能自閉症青年男子15名とVIQとPIQを個人マッチさせた対照群15名で,両群に対して単語完成課題を用いた言語—言語プライミングと絵—言語プライミングの2種類を行った。その結果,自閉症群は,言語,絵のいずれのモダリティにおいても,対照群とほぼ同程度の意味プライミング効果を示した。しかし,自閉症群においては,絵—言語プライミング成績が言語—言語プライミング成績よりも有意に高かった。このことより,自閉症における絵画的意味処理の優位性が示唆された。さらに,絵と言語の意味処理過程の非対称性について論じた。

水中毒と横紋筋融解症

著者: 宮本歩 ,   長尾喜代治 ,   長尾喜一郎 ,   鯉田秀紀 ,   長尾喜八郎

ページ範囲:P.263 - P.268

【抄録】 強迫的多飲症から水中毒を来し,横紋筋融解症を併発した精神分裂病の2症例を報告した。血清GOT,LDH,CPK値が上昇し,血清CPK値は水中毒発症後,数日で10,640IU/L,37,410IU/Lまで上昇した。水制限の後,血清Na値,尿量に注意しながら輸液を行い,抗パーキンソン薬の継続投与をしたところ,2症例とも良好な経過をとった。これまで報告された横紋筋融解症を併発した水中毒30症例について検討したところ,次のような特徴がみられた。①原疾患の67%が精神分裂病であった,②90%に意識障害,64%に発熱を認めた,③血清Na値は128mEq/L以下であった,④CPK値が最高値となるのは水中毒発症後3.2±1.4日目であった,⑤3例が急性腎不全となり死亡例は2例であった。

熱射病を呈した精神分裂病の1例—緊張病症候群増悪後の悪性症候群発症の既往との関連

著者: 西村伊三男 ,   川上富美郎 ,   石黒淳 ,   松田幹 ,   福居顯二 ,   中嶋照夫

ページ範囲:P.269 - P.273

【抄録】 緊張病症候群の増悪の後に悪性症候群を発症した既往を有し,真夏日に熱射病を呈した精神分裂病の1例を報告する。1994年8月2日朝より悪寒を自覚し,さらに意識障害,高体温,呼吸状態の悪化を認めたため,当院を救急受診した。全身の冷却および呼吸,循環動態の治療を実施したが奏効せず,DICを併発し,翌日早朝に死亡した。熱射病の易罹病性が指摘されている抗精神病薬の服薬量は,それほど多いものではなかった。それにもかかわらず熱射病を呈したのは,その既往より推測される間脳を中心としたドーパミン神経系の脆弱性により,視床下部に存在する体温調節中枢が熱負荷に対して十分に機能しなかったためと考えられる。

痴呆の危険因子としての高血圧の疫学的検討—痴呆群の層別とロジスティック解析の問題点

著者: 苗村育郎 ,   阿部清子 ,   菱川泰夫

ページ範囲:P.275 - P.281

【抄録】 高血圧(HT)が脳卒中に限らず,さらに広い患者群に対する痴呆の危険因子であることを統計的に証明するために必要なステップを,520名の痴呆者を含む計3,097名を対象として示した。解析にはロジスティック回帰分析を用いた。その結果,(a)痴呆群全体をまとめて目的変数として,「あり/なし」で扱うかぎりはHTとの関係は明瞭にならない。(b)痴呆群を重度群と軽度群の2群に分ければ,アルコール(AL)過飲と高脂血症(HL)は軽度痴呆の有意な危険因子となる。(c)重度群からAlzheimer病などの変性疾患や慢性消耗性疾患に伴う痴呆(計13%)を除外することで,HTと痴呆との関係は明瞭となる(rr=1.83,p<0.0008)。この場合,脳卒中歴のある者を除外しても結論は変わらない(rr=1.79,p<0.003)。(d)因子間の交互作用に関しては,軽度群とは異なり,重度群においては,HTとAL過飲およびHLの間に正の交互作用は認められなかった。

Lafcadio Hearnに認められた異常心理と自己治療—百年後の日本からの視点

著者: 遠藤みどり

ページ範囲:P.283 - P.292

【抄録】 Lafcadio Hearn(小泉八雲)は1890年に来日し,後の旧制松江中学・五高・東大・早大で教鞭をとった。彼には被害妄想的言動があったことが知られているが,その病跡に関しては未だ報告に乏しい。しかし彼の生活歴には,幼時のPTSDや多文化間での軋轢など,今日と相通ずる問題が多々認められる。その履歴や家族歴からすれば,彼には今日ならば境界型人格障害と診断されても不思議でない時期があったと思われるが,晩年は明治日本の家長として社会的責任を立派に全うしている。最近数年間に新たに明らかになった資料を加えて眺めると,彼の人格の統一をたすけた環境上の要因がかなり詳らかになり,精神保健上有益な示唆が得られると思われた。

短報

慢性疼痛と無けいれん通電療法

著者: 野田寿恵 ,   木村哲也 ,   坂本英史 ,   矢吹すみ江 ,   秋山剛

ページ範囲:P.293 - P.295

 国際疼痛学会では,痛みを「組織の実質的あるいは潜在的な損傷を伴い,このような障害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚,情動体験」と定義している11)。痛みに伴う情動とは,主に抑うつ,焦燥,不安などであり,慢性疼痛の患者に抑うつ症状が出現した場合,しばしば抗うつ剤などの向精神薬が投与される。また,うつ病が合併した慢性疼痛に対して,電気けいれん療法が有効であったとする報告が,1946年以来いくつかみられる8)。今回我々は,ペインクリニック科での様々な疼痛治療や向精神薬の投与で,症状の改善をみなかった慢性疼痛の症例7例に対して,無けいれん通電療法modified electroconvulsive therapy(mECT)を本人の告知同意のもとに施行した。7例の中で,改善が得られた症例と改善が得られなかった症例の臨床的特徴を比較し,慢性疼痛に対する無けいれん通電療法の適応について若干の考察を加えた。

反射性交感神経性ジストロフィーへの無けいれん通電療法の適用

著者: 木村哲也 ,   坂本英史 ,   矢吹すみ江 ,   野田寿恵 ,   秋山剛

ページ範囲:P.297 - P.299

 反射性交感神経性ジストロフィー reflex sympathetic dystrophyは,四肢の骨折,捻挫,打撲などの損傷後,①激痛(灼熱痛),②交感神経症状(浮腫,発汗異常,皮膚温度変化),③局所栄養障害(皮膚菲薄化,骨萎縮),④機能障害(関節拘縮),⑤知覚異常(アロディニア,知覚過敏)といった様々な症状を呈する疼痛性症候群である。痛みは骨折などによる損傷だけでは説明がつかないほど激烈であり,またその神経支配領域を越えて広がる。一般に難治性で,決定的な治療法がなく,治療に非常に難渋する。また,激しい痛みが長期にわたるため,抑うつ,不安などの精神症状が伴いやすい。
 都立荏原病院の土井らのグループはRSDなどの神経因性疼痛に対して,無けいれん性通電療法(modified electroconvulsive therapy;mECT)が有効であることを学会報告している1,2)。今回我々は,受傷前に精神疾患の既往がなく,長期にわたる痛みの後に大うつ病性障害が発現し,交感神経ブロックなどのペイン科での治療がほとんど無効であった反射性交感神経性ジストロフィーの2症例に対し,本人の書面による同意のもと,mECTを施行した。この2症例について報告する。

ドリンク剤飲用が発症の契機となったパニック障害の1例

著者: 門矢規久子 ,   西野直樹 ,   中井隆 ,   三田達雄

ページ範囲:P.301 - P.303

 パニック発作はパニック障害の基本症状であり,アンフェタミンやカフェインなど主に交感神経刺激作用を有する精神活性物質の急性中毒の症状でもある。またパニック障害患者では,コーヒーなどに含まれるカフェインに対する感受性が亢進しており,カフェイン摂取によりパニック発作が誘発されることが報告されている3)。しかし,我が国では物質によるパニック発作誘発の研究報告8)はほとんどない。我々は,カフェインを含有するドリンク剤の飲用を契機にパニック発作が出現し,さらに,コーヒー飲用や喫煙でもパニック発作が誘発され,パニック障害が結実したと思われた症例を経験した。本症例の臨床経過を呈示して,物質のパニック発作誘発性について考察を加える。

Risperidoneによる軽躁状態

著者: 小林聡幸

ページ範囲:P.305 - P.307

 Risperidoneは我が国においては分裂病の治療薬としてのみ承認されているが,英語文献では抗うつ作用を有する可能性5,6)とともに,分裂病や分裂感情障害などで躁状態を誘発あるいは増悪させることを示唆する報告1,2,4,5,8〜10,12〜14)がみられる。今回我々は,分裂病の初期治療にrisperidoneを使用したところ,軽躁状態を呈した1例を経験した。若干の考察とともに報告する。

著明な地誌的見当識障害を呈したヘルペス脳炎後遺症の1例

著者: 北山徳行 ,   朝田隆 ,   木村通宏 ,   村松玲美 ,   松田博史 ,   宇野正威 ,   高橋清久

ページ範囲:P.309 - P.311

 右側優位の側頭葉内側を中心とする病巣を示し,記憶障害と地誌的見当識障害を主徴とするヘルペス脳炎後遺症の1例を経験した。画像所見との関連で若干の神経心理学的な考察を行った。

HIV感染者の「告知に対する反応」について

著者: 山方里加 ,   石金朋人 ,   中田潤子 ,   加藤温 ,   沼上潔 ,   笠原敏彦

ページ範囲:P.312 - P.314

 近年,HIV感染者の増加に伴い精神科的な対応が必要とされる症例が多くなっている4)。ところで,HIV感染者の「告知に対する反応」に関しては,当初よりがん患者のそれに準じて考えられてきた。しかし,実際の患者をみると,特に最近の治療法の開発に伴い,HIV感染者は告知に対して必ずしもがん患者と同様の反応を呈するわけではないように思われる。我々は当科を受診した5症例について,「告知に対する反応」という観点から検討し若干の考察を加える。

資料

精神保健福祉センターにおける訪問活動—第2報:精神保健福祉法23条に基づく診察申請の症例検討

著者: 堀田直樹 ,   須賀一郎 ,   春日武彦 ,   大杉彰友 ,   浦野弘美

ページ範囲:P.315 - P.321

 精神保健福祉センター内に「複雑困難ケース相談班」を組織し,3年間保健所や家族らからの相談に応じてきた。その相談の中に,周囲の人々との間でトラブルが絶えず,その言動が常軌を逸しているため精神的に問題があるのではないか,診察をして精神障害があるなら必要な保護をお願いしたいという,地域住民から精神保健および精神障害者福祉に関する法律(以下精神保健福祉法と略)の第23条6)(以下23条と略)に基づく診察申請に至ったものが含まれていた。
 23条は,一般住民の申請による診察について触れたもので,条文は「精神障害者又はその疑いのある者を知った者は,誰でも,その者について指定医の診察及び必要な保護を都道府県知事に申請することが出来る。」となっており,診察の結果要措置となれば措置入院となる。「わが国の精神保健福祉」4)によると,措置入院関係の申請・通報・届け出の処理件数は,1965年33,965件で,その後急速に減少し,1975年16,469件,1985年6,480件,精神保健法が施行される前年の1987年には5,864件となり,施行後一時増えたものの1993年には5,642件となっている。そのうち23条に該当する申請は1965年26,698件と全体の79%を占めていたが,1970年17,163件で全体の66.9%と減少し,以後一貫して減少し続け1993年には463件で全体の8.2%を占めるにすぎなくなった。

私のカルテから

初老期・老年期に口腔内異常知覚を呈した3症例

著者: 武井明

ページ範囲:P.322 - P.323

症例
 〈症例1〉 初診時63歳,男性。
 診断 心気状態,多発性脳梗塞。

シリーズ 日本各地の憑依現象(9・付録)

韓国の神病—その臨床像,力動および文化的な意味付け

著者: 金光日 ,   金大虎 ,   吉永真理

ページ範囲:P.325 - P.330

はじめに
 韓国には「降神巫」と「世襲巫」という2つの異なったタイプのシャマンがいる。前者は己の意思にかかわらずシャマンになった人々のことを言い,後者には親族から学んでシャマンになった人が含まれる。降神巫になるには精霊の召命のお告げが不可欠である。こうした精霊のお告げという現象が神病(shin-byung)であり,巫病とも呼ばれている。しかしながら神病となったもののすべてがシャマンになるわけではない。そして逆に彼らの大多数がシャマンにならないために,葛藤を経験している。この葛藤が神病の経過を悪化させたり,早めたりする。こうしたケースでは精神科医が必要とされる。
 最近になって,DSM-IVにおける文化結合症候群への認定といったいくつかの動きによって,hwa-byung(火病)と神病は再び注目を集めることとなった。
 本論において,我々は神病の臨床像と精神力動上の意味付けおよび韓国の伝統文化との関連について紹介したいと思う。

動き

「第12回国際事象関連電位会議」印象記

著者: 古賀良彦

ページ範囲:P.331 - P.331

 国際事象関連電位会議(International Conference on Event-related Potentials of The Brain;EPIC)は事象関連電位(ERP)の研究会としてはもっともよく知られたものである。運営には大きな特徴があり,すでに3年ごとに12回も開催されているにもかかわらず母体となる組織といったものが存在しない。会議のたびに参加者全員の協議によって次の会長が決定され,その後は新たな会長にすべてが任せられるという方式がとられてきた。筆者は第8回から続けて参加しているが,どの会議も会場は宿泊施設内に設けられ,少なくとも5日間にわたり夜遅くまでプログラムが組まれていた。そのために参加者は互いにすぐに親しくなって,遠慮なく議論を交わすことができた。固定した組織を持たずにEPICが今日まで発展してきたのは,このような実質的な会議の進め方を好み,繰り返し参加するメンバーが多いためと思われる。

「第13回精神研国際シンポジウム『先端医療とリエゾン精神医学』」印象記

著者: 築島健

ページ範囲:P.332 - P.334

 医学医療の進歩は,人々に多くの恩恵をもたらすと同時に,多くの新たな心理社会的・倫理的問題をもたらした。身体合併症,臓器移植,サイコネフロロジー,サイコオンコロジー,遺伝カウンセリングなど,リエゾン精神医学の活躍の場はますます広がっている。
 東京都精神医学総合研究所(松下正明所長)では精神医学および関連領域の課題について,内外の第一線の研究者を招き,1985年から毎年1回国際シンポジウムを開催している。第13回目の今年は,「先端医療とリエゾン精神医学—臓器移植,がん,HIV,遺伝子治療における精神医学的問題」と題して,9月29日,30日の両日,東京のアルカディア市ケ谷(私学会館)で行われた。当初の予定を大幅に超える約300名の参加があった。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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