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文献詳細

雑誌文献

精神医学41巻4号

1999年04月発行

文献概要

研究と報告

薬物依存者による薬局強盗の1例—メチルフェニデートの作用を中心に

著者: 中谷陽二1 井上幸代2 菊池道子3

所属機関: 1東京都精神医学総合研究所社会病理研究部門 2東京都立松沢病院精神科 3東京都精神医学総合研究所臨床心理研究部門

ページ範囲:P.361 - P.366

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【抄録】 薬局強盗を行った薬物依存者の精神鑑定について報告した。犯行時33歳の男性で,睡眠薬,覚せい剤,コカイン,大麻など多剤の乱用歴を持つ。約1年前から複数の医療機関でmethylphenidateを入手し,他の薬物と併用して1日量300mgを連用したが,父に知られて禁止された。犯行の約6時間前から残りのmethylphenidate,zopiclone,pentobarbitalを飲酒しながら服用した。映画「007」の音楽を聴くうちに「百人力の気分」になり,黒ずくめの服装で模造拳銃を携帯し,共犯者1名と薬局に侵入して向精神薬を奪った。犯行時は気分高揚,陶酔感,攻撃性が顕著で,注意力低下と部分健忘も認められ,軽度の意識障害が推測された。精神的変化の要因として向精神薬およびアルコールの相乗作用,心理的要因が推測されたが,情動変化に関しては特にmethylphenidateの影響が考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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