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研究と報告
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【抄録】 精神科受診者1,917例のうちMRIにて両側性海馬萎縮を示した124例について,その危険因子として高血圧の役割を解析した。(1)海馬萎縮に関するロジスティック解析によれば,加齢を別にすれば高血圧が各種の生活習慣病の中で唯一の有意な危険因子であり,その相対危険度はrr=1.84(p<0.01)であった。(2)高血圧はまた,側頭萎縮に関しても有意な危険因子であった(rr=2.61,p<0.0001)。(3)側頭萎縮と海馬萎縮との関係を検討した結果,両者は互いの危険因子とはならず,海馬萎縮が側頭萎縮の部分現象として生じている可能性は否定された。(4)両側の海馬に明らかな萎縮があれば,その症例の93%(116/124例)に痴呆,75%(93/124例)に高血圧の合併があった。海馬の萎縮が,記銘力障害を前景に持つ緩徐進行型痴呆の主因となったと思われる例(海馬萎縮性痴呆)は今回の全痴呆者の8%(32/390)であり,海馬萎縮者の26%(32/124)であった。
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