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文献詳細

雑誌文献

精神医学41巻6号

1999年06月発行

巻頭言

コトバの問題

著者: 土居健郎1

所属機関: 1聖路加国際病院精神科

ページ範囲:P.568 - P.569

文献概要

 最近聞いた話だが,医学部教授の選考に当って,候補者を評価する際,次のような方法が取られるという。それは候補者がこれまで書いた論文がどのような雑誌に載ったかということをもって判断の目安とすることだが,この場合その雑誌が権威あるものであれば,それだけ多くの人に読まれ,引用される機会が多くなるので,評価点が高くなる。これをimpact factorと称し,発表される雑誌の序列によってそれぞれ何点ときめておき,各候補者の優劣は各自の業績の合計得点によって判定するというわけである。
 私はこの話が本当かどうか知らない。いかにもありそうな話だから,多分本当だろう。このやり方がすべての大学で一様に行われているかどうかも私は知らない。仮にこの話が本当で,かなりの大学で現に行われている教授選考の方法であるとすると,これは昨今識者の間でしばしば話題となる大学受験の際の偏差値重視の事実とあまりにも類似してはいないか。もっとも教授候補者の間に優劣をつけねばならぬというのはわかる。また彼らの論文の質をimpact factorで測ろうというのもわからぬではない。しかし問題は個々の論文をそれが発表された雑誌の序列によって点数化することだ。というのはこの場合,国際的に評価の高い雑誌に発表された英語の論文だけが高得点を獲得することになるからである。聞くところによると,日本語の論文はほとんど業績の中に数えられないというのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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