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文献詳細

雑誌文献

精神医学41巻8号

1999年08月発行

文献概要

展望

精神疾患における双生児研究の歴史と今後の方向

著者: 米田博1 横田伸吾1

所属機関: 1大阪医科大学神経精神医学教室

ページ範囲:P.802 - P.809

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はじめに
 双生児には,一卵性と二卵性がある。一卵性双生児は1個の受精卵が卵割の際に2つに分かれ2個体となったものであり,双生児間の遺伝的な構成は全く同じである。そこで,一卵性双生児間の形質の違いは環境の違いによるものと考えられる。一方,二卵性双生児は2個の受精卵から生まれてくるので,遺伝的構成の相似度は同胞と同じく約50%であり,双生児間の形質の違いは遺伝と環境の両方の違いによると考えられる。したがってある形質の発現が遺伝と関係がなければ,一卵性双生児と二卵性双生児の形質の類似度は同じになるはずである。また環境と無関係であるならば,一卵性双生児の間で形質の違いはないはずである。双生児研究(twin study)は,このような考えに基づいて,精神障害の発現が遺伝によるものか,環境によるものかを調べる重要な研究手法となっている。
 このような双生児研究のアイデアは,進化論で有名なDarwimの甥に当たるGaltonによって提出されたが,当時はまだ双生児の卵性についての十分な知識はなく,双生児研究の基礎はSiememsによって確立された。その後精神医学領域では,内因性精神病を中心に多くの双生児研究が行われてきたが,双生児研究が行われる以前から,家系研究や家族歴研究によって精神疾患の家族内集積,例えば,精神分裂病は発端者の同胞で一般集団よりも約10倍の高い頻度で出現することが知られていた。しかしながら精神疾患の家族内集積性は,遺伝的な要因による世代間の伝達,あるいは家族内の環境要因の共有によるという2つの可能性があり,家系研究や家族歴研究ではこの問題を解決することはできなかった。双生児研究はこの素因(nature)と環境(nurture)の問題を分離するために行われるようになった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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