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研究と報告
文献概要
【抄録】 本稿の目的は,精神分裂病患者の自己のあり方に着目した一つの治療的対応を提示することである。この対応では,精神分裂病の病的状態において患者の自律やまとまりが損なわれているという理解の下で,患者の自己評価を保護し自己概念を強化する介入によって,その状態からの回復が援助される。このようなアプローチが奏効したと考えられる例として,被害妄想を抱き周囲の援助を受け入れなかった症例および対人的葛藤に巻き込まれて決断不能の状態に陥る症例を提示した。さらにこの精神分裂病に由来する障害された自己の状態に対して,従来の自己愛や自己評価についての議論を参照しながら,この自律や自己のまとまりの回復を進める心理的介入の有効性について検討を加えた。
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